日本オラクルは13日、米Oracleが2007年11月に発表したサーバ仮想化製品「Oracle VM」の国内提供を開始した。Oracle VMはOSSのXenをベースにしており、使いやすいWebインタフェースとスループットの大幅な改善を図った仮想化ソリューション。「パフォーマンスと価格で競合製品を圧倒している」(米Oracle チーフ コーポレート アーキテクト エドワード・クリスベン氏)、「単に仮想環境をディスカウントしただけではない、ソフトウェアの常識を変える製品」(日本オラクル 常務執行役員 製品戦略統括本部 統括本部長 三澤智光氏)と、同社エグゼクティブも製品の出来に自信を隠さない。
クリスベン氏は、Oracle VMのほかにも「Unbreakable Linux」の戦略的イニシアティブを指揮する立場にある人物。「顧客から『OracleがLinuxのサポートをしてほしい』と要請されたからUnbreakable Linuxが生まれた。Oracle VMも同じで、『Oracleが仮想化をサポートしてほしい』という要望があったからこそ誕生したソリューション」(クリスベン氏)と語るように、Oracle VMは単なる仮想化ソフトウェアではなく、同社が提供するアプリケーション全般をワンストップでサポートする"インフラソリューション"という位置づけのほうが正しいようだ。
同製品の特長として、三澤氏は、"速い"、"安い"、"ワンストップ"の3つを挙げる。まず速さ、すなわちパフォーマンスに関しては「オーバーヘッドは10%以下で、VMwareと比較しても約3倍の効率性をもつ」(クリスベン氏)という。また、今回最も注目された価格については、ライセンス費用は無料、サポートのみ費用が発生する。「VMwareやMicrosoftに比べると破壊的に安い提供価格」(三澤氏)だが、単純に「安いVM環境」というだけでなく、導入しやすい価格に設定したことで仮想化が促進され、全体として企業のTCO削減につなげることが狙いだ。
Oracle VM提供価格
最大2個のCPU | CPU無制限 | サポート | |
---|---|---|---|
ソフトウェア価格 | 無料 | 無料 | Webサイトからバイナリおよびソースがダウンロード可能 |
Oracle VM Premier Support(1年) | 6万2,400円(税別) | 12万4,900円(税別) | Unbreakable Linux Networkからのソフトウェアおよび更新へのアクセス、24時間365日のグローバルサポート |
Oracle VM Premier Support(3年) | 18万7,100円(税別) | 37万4,600円(税別) | ネットワークアクセスと24時間365日のグローバルサポート |
Oracle VMは仮想マシンを実行するサーバベースの仮想化環境「Oracle VM Server」と、VMの作成を行うWebベースの管理ツール「Oracle VM Manager」から構成されている。サポートするゲストOSは以下の通り。
- Oracle Enterprise Linux 4/5
- Red Hat Enterprise Linux 3/4/5
- Windows 2003、Windows Server 2003、Windows XP(HV対応)
対応するOracle製品は「Oracle Database 10g Release 2」「Oracle Database 11g Release 1」「Oracle Application Manager 10g Release 2/3」「Oracle E-Business Suite 11.5.10/12」「Oracle Siebel CRM 8.0」など。また「Oracle Real Application Clusters」は現在テスト中で、2008年中には対応する予定。
ライバルはVMwareではない!?
クリスベン氏はプレゼンテーション中、しきりに「ソリューション(solution)」という言葉を繰り返し強調していた。Oracle VMのベースとなっているXenについても「Xenはいい技術だが、ソリューションではない」と言い切る。つまりXenを"エンタープライズソリューション"までに高めたのがOracle VMということなのだろう。
Oracle VMが狙う市場は、テスト環境と本番環境がつねにフル稼働している開発現場のような、複数の環境がタイムラグなしで動くことを余儀なくされている企業である。とくに障害時であってもサーバがストップすることは許されないという風潮にあって、仮想化によるリカバリ環境の構築は、大きなビジネスチャンスとなりつつある。
「VMwareはVMwareでいい製品だと思う。ただオラクルの方向性とは違う」と三澤氏は言う。むしろ仮想化技術を擁するVMwareやMicrosoftよりも、それらをベースにしたビジネスを展開するHewlett-PackardやEMCと競合する機会が多いのではないだろうか。仮想化技術がVMware、Xen、Hyper-Vの3つに絞られた今、ビジネスのフェーズはオラクルの言う"エンタープライズソリューション"へと移りつつあるのかもしれない。