動画投稿サイト「Soapbox」投入、MSNのデザイン、レイアウト一新
マイクロソフトがオンライン事業をさらに加速させる。動画投稿サイト「Soapbox」のサービスを国内で開始するとともに、4月からはMSNサイトを刷新、コンテンツ充実化と使い勝手の改善を図る。これによって、利用頻度を向上させ、Windows Liveとともに、広告媒体としての価値を高める考えだ。さらにはパートナーとの連携を進展させ、同社の広告事業のプラットフォームとしての基盤をいっそう強化する。
「Soapbox」は、MSNビデオのカテゴリ内の新機能として設けられる。すでに米国では運用を開始している。既存のニュース、スポーツ、エンタテインメントなどと並び、新たに「Soapbox」のタブが追加される。エンドユーザーは自由に動画を投稿、全世界のSoapboxコミュニティと、動画を共有することが可能だ。同社では、Soapboxの展開にあわせ、さまざま企画を予定している。「Short Shorts Film Festival」と連動、作品オンライン投票により、MSNアワードが授与される。一般ユーザーもSoapboxから作品を投稿できる。また、くりぃむしちゅーの有田哲平が出題者を務め、お笑い芸人を目指す人々や若手芸人がお笑い作品を投稿、優秀な作品を選ぶといった企画も開始する。
一方、MSNはトップページのデザイン、レイアウトを大きく改編。ニュース、天気情報、Hotmail、メッセンジャーアイコンなど、毎日使う情報や機能をページの上部に配置する。MSNユーザーからの関心が高いという株価など金融情報も上部の見やすい位置に配する。また、より深い情報を提供するチャンネル、ビデオクリップなど、編集部のイチ押しコンテンツのビジュアル面をさらに洗練化する。同社オンラインサービスグループMSNメディアネットワーク エグゼクティブプロデューサーのSean Chu氏は「毎日使いたくなるサービスを提供していきたい。(今回の刷新で)変わりゆくMSNをコンシューマにアピールする」としたうえで、「これはあくまで第一歩」と話す。
ユーザーとの関係性強め、利用時間増を目指す
Windows Liveは、多くのさまざまなネットワークサービスを基本的に無償で提供するサービスプラットフォームであると同時に、マイクロソフトの広告事業の中核でもある。Windows Liveをいっそう拡大、推進していくにあたり、「ユーザーエンゲージメント強化」(同社)を前面に据えている。同社オンラインサービスグループ プロダクトマネージメントグループ Windows Liveチーム ディレクターの小野田哲也氏は「ユーザーは複数のサービスを利用すればするほど、利用時間が長くなり、単一のサービスを使う時間も長くなる」と指摘。ひとつのIDで、より多くのサービスを利用しやすくなるよう、シングルサインイン、サービスの一括ダウンロードができるようにしている。使いやすい利用環境を用意し、ユーザーとの結びつきをより高くすることが狙いといえる。
Windows Live Agentもまた、ユーザーの利用時間増に貢献するものだろう。同社では、Windows Live Messngerの利用方法、プロモーション情報などを教えてくれるAgent、いわば会話ロボットを用意。「まいこ」と名づけられたキャラクタが会話しながら説明や告知を行う。「すでにユーザー数は10万人以上、国内メッセンジャーユーザーの会話の0.4%は、まいこで占めている」(小野田氏)ほどの人気だ。
サービス、コンテンツの拡充により、自力でのユーザー獲得だけでなく、パートナーとの連携を強め、パートナーを介してユーザー数の増加につなげようというのが、Windows Live普及・拡大戦略だ。今年1月に発表した、NTTコミュニケーションズとの提携による、Windows Live Messngerを用いた、ソフトフォンサービス「Windows Live Call」はその一例だ。「Windows Liveをプラットフォームとして、APIを公開し、パートナーのサービスと深く統合」(小野田氏)することで、同社とパートナーによるエコシステムを拡大する。
リッチ&リーチで、広告の売上げ拡大ねらう
マイクロソフト デジタルアドバタイジング ソリューションズ 業務執行役員 福徳俊弘氏 |
それでは、ここまでの同社の広告事業の実績はどのようなものか。同社の2008会計年度上期(2007年7-12月期)の、音声・動画などを用いる「リッチメディア広告」「MSNビデオ広告」の売上げはともに、前年同期比で45%増加しているという。これには「広告主の規模が変化している」(マイクロソフト デジタルアドバタイジング ソリューションズ 業務執行役員の福徳俊弘氏)ことが背景にある。大手企業、いわゆるナショナルクライアントは、1年前には、同社の広告主のトップ30社のうち8社だったが、今年は18社と2倍以上になっており、売上げのシェアでいえば、34%から60%に伸長した。主な業種としては、自動車、通信、家電、飲料であり、これら各社が「リッチメディア広告」を多用するわけだ。
福徳氏は、「MDAS(Microsoft Digital Advertising Solutions)のキーワードはリッチ&リーチ。デジタルテクノロジーが広告ソリューションを変える」と語る。リッチ&リーチとは、「リッチな広告表現とデジタル技術の融合により、ブランディング・ソリューションを提供すること」であるという。Silverlightに代表されるような、Web上での表現力を向上させる技術を起爆剤に、「リッチ度」を高め、企業のブランド力強化を図る。
マイクロソフト 執行役 常務 オンラインサービス事業部長 笹本裕氏 |
同社執行役常務オンラインサービス事業部長の笹本裕氏は「この1年、開発に力点を置いてきた。それととともにパートナーとの協業も進めてきた。オンラインのプラットフォームを確立して、なかでも広告で一つの軸を作ろうと努めてきた」と振り返る。米MicrosoftがWindows Liveの戦略を発表したのは2006年11月だった。明けて2007年、同社のネットワークサービス+広告事業への取り組みは急速に進んだ。2007年8月には、ネット広告の米aQuantiveを買収、10月にはSNS事業の米Facebookに資本参加、12月には複合メディア企業の米Viacomと提携した。この動きは2008年に入っても、止まっていない。2月には、米Yahoo!に買収を提案したことは記憶に新しい。笹本氏は「Yahoo!への買収提案は、より多くのユーザーにマイクロソフトの製品を使ってもらおうとの考えのあらわれ」と述べた。