マイクロソフトは、IT技術者向けの支援活動を強化、従来の「Power to the PRO」を発展させ、「Power to the PRO Next」として新たな施策を追加する。必要な情報を見つけやすくするなど技術資料の提供内容や提供形態の強化、技術的な問題解決に役立つサービスの強化、中小規模の企業に所属するIT技術者への支援プログラム提供の3点を柱とする。

これまで同社はITの評価、導入、運用管理などに携わるIT技術者の日常的な業務を支援することを目的として、2006年8月から「Power to the PRO」と名づけた支援活動を無償で実行してきており、Solution、Satisfaction、Skill、Synergyの4つの「S」を中軸に、次のような取り組みを続けてきた。

Solution ・MSDN(Microsoft Developer Network)オンラインを通じた技術情報の提供
・MSDNサブスクリプションやTechNetサブスクリプションでの技術情報提供のほか、評価用ソフトウェアやベータ版などの提供
Satisfaction セミナーやイベントなどを通じた直接的な技術習得機会の提供
Skill 認定資格制度の運営とトレーニングプログラムの提供を通じたスキルアップ支援
Synergy 企業/組織の垣根を越えたオンラインコミュニティの運営とコミュニティ支援団体との連携など

同社では春と秋の年2回、顧客やパートナー企業のIT技術者を対象に満足度調査を実施している。この調査では、以下のような声が寄せられたという。

  • 日本語の技術情報の充実化
  • 情報提供のためのWebサイトの構造が複雑で、技術資料が見つけにくい
  • 製品の品質、セキュリティの一層の向上
  • 製品ライセンスがわかりにくく、提案、購入が困難
  • 実用的な方法、障害発生時の解決策に役立つ資料がほしい
  • オンラインなどによる気軽な相談窓口がほしい
  • 障害発生時などの際に該当する技術情報を即座に検索したい
  • 中小規模企業の技術者を対象にしたサービスはないか

ITエンジニアから寄せられた声

同社ではこれらに対する意見、要望に応え、次のような施策を展開していく意向だ。

  • MSDNオンラインやTechNetオンライン上の日本語文書の充実を図り、2008年9月までの6ヶ月間で約1万ページの技術文書を翻訳する。
  • MSDNオンラインとTechNetオンラインのプラットフォームを改善、大量の文書の中から必要な情報を迅速に見つけられるよう2008年9月をめどに、現在のMSDNオンラインとTechNetオンラインのWebサイトを改め、新しいユーザーインタフェースを導入するとともに、関連するサポート技術情報と連携させる。
  • 同社の公式技術解説書である「MS Press」も増強、今後1年間で「Visual Studio 2008」、「Silverlight」などの新たな製品や技術を中心に約20タイトルの書籍を追加で出版する。

また、利用者の投稿による 「質問」と「回答」を通じて、同社製品や技術について情報交換のためのオンライン掲示板「MSDN フォーラム」や「TechNet フォーラム」がすでにあるが、同社は3月5日から技術サポート部門の技術者5人を専任でフォーラムに配置、IT技術者からの質問に回答する機会を提供する。

情報検索サービスの点では、必要な情報を発見しやすくするため同サービスの提供範囲を拡大、IM(インスタント メッセンジャー)を利用したIT技術者の求める情報の所在をチャット形式で知らせるサービスを6月までに開始する予定だ。

さらに、中小規模企業のIT技術者に対する技術支援サービスも拡充する。現状では、IT技術者向け支援策はほとんどがオンラインを通じたものとなっているため、「特に中小規模事業所や地方の企業への対応や支援が十分とはいえない」(同社)ことから、それらの技術者個人に対し、技術情報、書籍、製品評価版の提供、セミナーの実施、相談できる専用窓口の設置などのサービスを無償で提供する方針で、詳細は4月に発表する。

「Power to the PRO Next」での新たな取り組み

ダレン・ヒューストン社長に代わり4月1日付で新社長に就任する樋口泰行 代表執行役 兼 COOは「マイクロソフトが日本で尊敬され、信頼される企業になるため策定したPlan-Jをさらに継続し、真摯にエンジニアの声に耳を傾けて、『Power to the PRO Next』を推進していく。すべてのITエンジニアに最も信頼されるパートナーを目指す。ITエンジニアにもっとスポットライトを当て、大切にしていかなければならない」と話す。

今回が国内での最後の記者会見となった、ヒューストン氏は冒頭「社長として在任してきたなかで十分にやれなかったことがあるとすれば、ITのプロフェッショナルや開発者への支援だ。最後の会見のテーマとしてこの問題を選んだ理由もそこにある」と述べた。また「日本は進んだIT社会だが、職場でのIT化はまだあまり進んでいない。ITインフォメーションワーカーの生産性は、欧米に後れを取っている。逆にいえば、生産性向上を推進していくチャンスでもあるが。日本では、エンジニアの数自体が足りない。スキルも向上させなければならないが、長時間労働のためトレーニングもなかなか受けられない。言語の壁やダブルバイト文字の問題もある。日本の現場の声をもっと聞き入れ、さらに、エンジニアの開発者支援に力を入れなければならない」と強調した。

代表執行役 兼 COOの樋口泰行氏

代表執行役 社長のダレン・ヒューストン氏