矢野経済研究所は、昨年の12月から今年の1月にかけて国内のユーザー企業565社を対象にアンケートを実施し、「ユーザ企業のIT 投資実態と予測 2007-2009」と題して、IT投資に関する動向を取りまとめた。
矢野経済研究所の調査によれば、キーワードとしてSaaS(Software as a Service)の名を耳にする機会は増えているものの、企業は実際の導入には消極的だ。
まず、2007年度から2009年度にかけてのIT投資額の構成比を見ると、ハードウェアやソフトウェアは減少傾向にあり、運用保守や同アウトソーシングなどサービス分野が増加する見込みだ。SaaSは2007年度の1.0%から2008年度は1.4%、2009年度は1.5%と、微増に留まっている。
今後3年間のSaaS利用意向については、「利用意向あり」は30.1%に過ぎず、「利用意向なし」が68.8%を占めた。利用意向がない企業にその理由を尋ねたところ、「互換性/システム間移行が難しそうだから」が17.5%で最も多く、「カスタマイズ性に乏しそうだから」が17.0%で続く。「操作性(使い勝手)に懸念」(15.2%)や「セキュリティ面が心配だから」(10.8%)も多い。
矢野経済研究所では、SaaS導入における最大の障壁は既存システムとの関係であり、既存システムの代替品としてSaaSはまだ不足と見なされていると推測。既存システムと連携させる場合も、共通プラットフォームを利用するSaaSの互換性に懸念があるという。カスタマイズや操作性に関しては、一定の変更が可能であっても他社と共通のインタフェースで利用せざるを得ないなど、自社の状況に合わせて使用できない可能性を懸念しているものと見られる。今後SaaSを普及させていくためには、ユーザーが抱いている互換性やカスタマイズ性などへの懸念を払拭するための、技術的および営業的な努力が必要になると矢野経済研究所は指摘する。