欧州委員会(EC)は2月29日(ベルギー時間)、欧州の研究・開発用ネットワークとして構築した高速インターネット「GEANT」を世界的なネットワークとして拡大する方針を発表した。今後、バルカン諸国、黒海や地中海などに面した地域、アジア、ラテンアメリカなど、広い地域に拡大する予定だ。
GEANTは欧州の研究・開発、学術用の次世代インターネットとして、EUと各国が出資して構築したネットワーク。欧州の各学術研究機関を結ぶネットワーク(NREN)を結んでおり、現在、EU諸国を中心に34カ国で3,500以上の大学や研究機関が利用しているという。ユーザー数は3,000万以上。ネットワークは距離にして5万km以上に達しており、ロシアを含む欧州大陸をカバーしている。伝送速度は10Gbpsで、研究開発用としては世界最速かつ世界最大規模としている。
EUは2000年にGEANTを発表、これまでの研究開発ネットワークをアップグレードするため、2億ユーロプロジェクトとして2002年にスタートした。各国の学術研究機関ネットワークのほか、汎欧州の研究開発・学術ネットワーク機関であるTERENA、およびDANTEと協力関係にあり、GEANTの運行管理はDANTEが行っている。
今回、EUは第3次として2012年までに9,000万ユーロを投資することを発表した。これを利用して、GEANTはバルカン諸国、黒海や地中海の諸国、ラテンアメリカ、アジア、アフリカ南部にネットワークを拡大する。各地区にある研究機関とのコラボレーションが可能になり、地球温暖化、宇宙電波、バイオ化学などの分野を中心に、共同研究が進むとみている。
例として、世界の電波望遠鏡をリアルタイム接続するEUプロジェクト「EXPReS」などを挙げている。また、GEANTは、欧州原子核研究機構(CERN)の大型ハドロン衝突型加速器(LHC)でも利用されている。この実験は世界最大級の学術的実験といわれており、世界の約500の機関に所属する5,000人の科学者を接続し、年間1,500万GBレベルのデータ量をシームレスに伝送するという。
GEANTは米国のインターネット2に対抗する位置づけで、今回の強化と拡大により、欧州の研究開発作業の促進や競争力強化につながると述べている。
EUではGEANTの今後の課題として、大学レベルでのボトルネック、開発作業を維持していくための資金利用法などを挙げている。