アイ・ディ・ジー・ジャパンは29日、都内で"ITが環境に及ぼす影響と、ITが環境に対してできることを探る"をテーマに「Green IT Conference & Demo 2008」を開催した。

東京電力 環境部長 影山嘉宏氏

午前中の基調講演には東京電力 環境部長 影山嘉宏氏が登壇、「エネルギーと環境問題」をテーマに講演を行った。

電気事業を推進するにあたっては、"安定供給の確保(Energy security)"、"環境保全(Environmental conservation)"、"経済性(Economy)"の3つの"E"が重要であるという。特に安定供給の確保は、資源の乏しい日本にとっては重要な問題であるとし、「安定供給の確保と環境保全の両面を十分に考慮した上で、経済性を追求することで環境と経済の両立を図ることが重要」(影山氏)とした。例えば石炭は使用すればCO2が多量に発生するが、石油の埋蔵量は41年、天然ガスで61年、ウランで61年だが、石炭は204年と他の燃料に比べて埋蔵量が多く、安定供給の面では重要な鍵を握る燃料になるという。

資源埋蔵量とエネルギー資源の分布

日本のエネルギー需給率は約6%、原子力を含めた場合でも約18%と、およそ8割を海外からの輸入に頼る脆弱な状況である。石油価格は1998年当時に比べ、約5倍に上昇しており、発電には向かなくなってきている。石油よりも価格の上昇が緩やかなLNGへ期待がかかるが、今後は欧米やアジア各国での需要が伸びることから、激しい争奪戦が繰り広げられれば、調達コストが今以上に高まる可能性がある。そのため、「国内で使用する電力を1つのエネルギーに頼るのはリスクが大きい」とし、石油への依存から脱却し、原子力、LNG、石炭などをバランス良く使っていくことが、エネルギーの安定供給につながるとした。

昨今のLNG需要の推移と今後の見通し

東京電力では、CO2の削減目標として、CO2排出原単位を2008~2012年度の5年間平均で1990年度比で20%削減することを掲げている。具体的には、「原子力発電の利用拡大」「自然エネルギーの開発/普及」「火力発電熱効率の向上」といった電気供給面の対策を行うほか、電気の効率の良い使い方を示す「エコライフの提唱」や「高効率機器の普及」などを行っていく。

特に原子力に関しては、太陽光や風力と同様、発電時にCO2を排出しないため、今後重要な発電設備になるとした。原子力発電による東京電力のCO2抑制効果は2006年度で7,850万t、日本全体のCO2排出量の約6%に相当するという。また、設備の建設、補修にかかるエネルギーをCO2に換算し、計算した場合、風力や太陽光に比べても少ないという計算となるという。

また、東京電力では、太陽電池などにより製造された電力を、一般に販売している電気料金の電力量料金単価相当で購入している。2006年度は、太陽光が約9万3,000件から約1億5,000万kWh、風力が42件から約1億9,000万kWhの電力を購入したという。

こうした取り組みにより、CO2排出原単位は右肩上がりに増加している販売電力量とは裏腹に1970年代からほぼ一貫して下がっており、CO2排出量の増加を緩やかなものとしている。2000年以降、CO2排出原単位、CO2排出量ともに急激に上昇したことがあったが、これは原子力設備の稼働率が著しく低下したことに起因しており、原子力発電所の稼働率の高まりとともに収まっている。

CO2排出量、排出原単位の推移

現在、クリーンなエネルギーとして太陽光や風力などの新エネルギーに注目が集まるが、「日本では地理的な問題もあることから、それほど多くは設置できない。また自然状況にも左右されやすく、安定供給の意味では原子力が1番」(同)とし、原子力の安全性の確保や説明責任を果たしていくことこそ、CO2削減につながるとした。