米IBMは2月28日 (現地時間)、100ワット電球1個程度の電力で8Tbpsのデータ転送速度を実現する光ネットワーク技術を明らかにした。スーパーコンピュータからHDコンテンツ、携帯電話に至るまで、数多くのアプリケーションにおいて情報へのアクセスや利用、共有の方法を変えるテクノロジになり得るという。
新技術の名称はGreen Optical Network。IBMは2007年3月に160Gbpsのデータ転送を実現する光トランシーバチップセットのプロトタイプを発表した。今回、同じ開発チームが高速チップを高密度な光配線で結ぶ"Green optical link"のプロトタイプを完成した。100メートルの伝送距離において、従来の電気的な配線に比べて光技術の消費電力は100分の1、光モジュールと比較しても10分の1以下だという。またIBMの新技術は、標準的なコンポーネントで光チップと光データバスを1つにパッケージできる。「高速トランシーバの開発に加えて、光コンポーネントをカスタムデバイスから量産可能なスタンダードパーツに近づけたことで、テクノロジの商業化に向けた重要な一歩を達成した」とIBMの研究者であるClint Schow氏は述べる。
Optocardと呼ばれる光対応の回路ボードでは、低損失ポリマー光導波路を通じてトランスミッタとレシーバを結ぶ。Optocardで構築されたデータバスは多数の高速チャネルを組み込めるだけではなく、髪の毛よりも細い導波路チャネルを実現できるほど高密度にパックできる。IBMは今日の量産チップ製造に用いられているのと同様のリソグラフィ技術で光導波路を形成し、標準的なプリント回路ボード上で32チャネルの光データリンクでモジュールを結ぶ、10Gb/sのデータバスのデモンストレーションに成功した。同社はまた、Green Optical Networkのプロトタイプを作成する上で、より多くのチャネルと高速動作を実現するパラレル光トランシーバも開発した。24個のトランスミッタと24個のレシーバが、それぞれ12.5Gb/sで動作する。これにより初期世代 (160Gb/s)から倍増近い、300Gb/sの双方向のデータ転送レートを達成した。現行の商用の光モジュールに比べると、同トランシーバは10分の1のサイズ、同程度の消費電力で10倍の帯域を実現する。また低コストでの量産が可能になるように、PC用マウスなどで幅広く用いられている850-nmの垂直共振器面発光レーザ (VCSEL)を新トランシーバに採用した。
IBMはこれらの研究成果をまとめた2つの論文「300-Gb/s, 24-Channel Full-Duplex, 850-nm, CMOS-Based Optical Transceivers」「Chip-to-Chip Board-Level Optical Data Buses」を2008 Optical Fiber Communications Conferenceで発表している。