日本SGIは21日、同社のスケーラブル・ビジュアル・クラスタ「Asterism」にNVIDIAのGPUコンピューティングプロセッサ「NVIDIA Tesla」を搭載した新モデルを発表。GPUコンピューティングソリューションとして提供を開始した。価格は110万円から。3月からの出荷開始を予定している。
GPUコンピューティングは、従来画像処理に用いられてきたGPUを画像処理以外の汎用的な処理に応用する試みで、GPGPU(General Purpose GPU)とも呼ばれる。GPUの持つ高密度な並列演算性能により、これまで大規模なシステムを必要としていた数値計算を、よりコンパクトなシステムでありながら同等以上の速度で演算処理することが可能となる。また、概算であるが、そうした高演算処理に用いられてきたベクトル計算機と比較して「初期投資にかかる予算を3.5桁程度抑えることができる」(慶應義塾大学 中村維男教授)という。
NVIDIAのTeslaは、2007年6月にリリースされたHPC(High-Performance Computing)向けGPU。1つのGPUにつき128個のスレッドプロセッサとメモリ帯域幅76.8GB/secで接続された1.5GBのメモリを搭載、理論性能値で518GFLOPSの演算性能を実現する。GPUを1つ搭載した演算プロセッサ「Tesla C870」、GPUを2つ搭載したDeskside Supercomputer「Tesla D870」、GPUを4つ搭載した演算サーバ「Tesla S870」の3種類がラインナップされている。
Teslaと接続されるワークステーションは、デスクサイドタイプの「Asterism Deskside ADT08」ならびに2Uラックマウントタイプ「Asterism Power AQ232」の2製品。ADT08は既存プラットフォームを用いた製品となっているが、AQ232はTesla採用に併せて新規に開発された製品となっている。ADT08がC870とD870、AQ232がS870にそれぞれ対応する。
GPUコンピューティングのアプリケーション開発には、NVIDIAが提供する開発環境「CUDA」を使用する。CUDAは、標準的なC言語のコンパイラ、ハードウェアデバッガツール、アプリケーション開発用のパフォーマンスプロファイラなどを含んだ開発環境で、ユーザーはこれを用いて用途に応じたアプリケーションの開発を行う。
日本SGIでは、同ソリューションの提供にあわせユーザーの用途に適したGPUコンピューティング環境をネットワークやストレージを含めて構築するコンサルティングサービスの提供も行う。また、このコンサルティングでは、「アプリケーションをGPUコンピューティングに最適化するためのチューニングトレーニングなども提供する」(日本SGI ビジュアライゼーション事業本部 ビジュアライゼーションシステム プラットフォームコンサルティング シニア・マネージャー 今野立也氏)としており、ユーザーの育成にも注力する。
また、同社では、GPUコンピューティングソリューションの提供開始に併せて、特定領域の汎用計算の市場を開拓し、その推進を支援する活動として、日本SGI HPC Open Forum内にGPU Computing分科会を設立した。
GPU Computing分科会の会長には慶応技術大学の中村維男教授が就任した。また、幹事企業としては、日本SGIのほか、NVIDIA Japan、エルザ ジャパン、プロメテック・ソフトウェアの3社が名を連ねている。
GPU Computing分科会の活動目的は以下の通り。
- GPU Computing環境の提供メーカーによる情報提供
- GPU Computing環境構築の支援
- ユーザーのGPU Computingの課題・解決策・成果の共有
会長に就任した中村氏は、「GPUコンピューティングを推進する上で、いかにユーザーに都合の良い環境作りをするかが重要な問題」と分科会の役割を語り、「GPUの適用領域を明らかにする」(同)ことが今後の目的となるとした。また、「計算機は所詮ただの道具。Teslaは多少CPUと比べ判断力は劣るが、1つの処理に対する計算能力が高い。使いこなせれば、低消費電力、低コストで高演算処理が可能となる」(同)とし、将来的にはGPUコンピューティングが既存の演算処理方法に取って代わる可能性があると示唆した。