米3Comは20日(現地時間)、投資会社の米Bain Capital Partnersと中国の通信機器メーカーHuawei Technologiesらによる3Comの買収が対米外国投資委員会(Committee on Foreign Investment in the United States: CFIUS)によって差し止められたことを発表した。同社は2007年9月、Bainが総額22億ドルのキャッシュで3Com買収に合意したと発表しており、政府機関等による審査を受けている段階だった。3Com買収にあたっては同社株式の一部をHuaweiが保有する旨の説明が行われており、これが外国企業による米国企業買収を監視する政府機関に問題視された可能性がある。なお3社では、引き続き買収成立に向けた交渉を継続していくことを表明している。

経済紙の米Wall Street Journalの記者ブログサイトに同日付けで掲載された記事によれば、今回の買収差し止めにあたっては3Comのセキュリティ製品部門であるTipping Pointの存在が問題視されたと報じている。Tipping Pointは米国防総省などの政府機関などにもセキュリティ製品を納めており、これが国防上や国際戦略上の障害になる可能性があるという。Bainによる3Com買収が成立した時点でHuaweiは同社株の16%を保有する計画であり、将来的にBainによるHuaweiへの3Com売却も考えられるため、Huaweiによる3Comへの影響力は少なからずあると判断されたとみられる。特にHuaweiは中国の通信機器メーカーではフラッグシップ的な存在であり、中国政府との関係も大きい。

今回の件で指摘されるのは、諸外国による対米投資抑制につながる恐れだ。たとえば、サブプライム問題対策で資本増強を急ぐ米Citi Groupなどの米金融会社は、中国やアラブの政府系ファンドによる巨額投資を次々と受け入れている。一方で金額的規模のはるかに低い米国の技術系企業の買収差し止めが行われたことで、そのバランス感覚が海外の投資機関の目にどのように映っているのかが問題となる。

従来まで暗号技術が軍事上のトップシークレットだったように、ITの一部の分野は依然としてセンシティブな技術として扱われている。大型M&Aがトレンドとなるなか、国境をまたいだ企業合併や買収は今後も増加していくことになるだろう。技術企業の買収はビジネス的な側面だけでなく、今後は国家間の戦略的な綱引きの道具としても利用されることになるのかもしれない。