米iSuppliは現地時間の2月20日、最新のNANDフラッシュメモリ市場レポートを発表した。その中で2007年に生産拡大競争から需給バランスを崩したDRAM市場と同様の危機にNAND市場が直面していると警告している。
2007年のNAND市場の売上げと市場シェアは以下の通り (単位は100万USドル)。
2007 | 企業名 | 07年売上 | 07年シェア | 06年売上 | 成長率 |
---|---|---|---|---|---|
1 | Samsung | 5859.1 | 42.1% | 5614 | 4.4% |
2 | Toshiba | 3876.6 | 27.9% | 3222 | 20.3% |
3 | Hynix | 2380.9 | 17.1% | 2189 | 8.8% |
4 | Micron | 853.9 | 6.1% | 357 | 139.2% |
5 | Intel | 410.3 | 3.0% | 111 | 269.6% |
6 | ST Microelectronics | 305.9 | 2.2% | 211 | 44.8% |
7 | Renesas | 209.5 | 1.5% | 594 | -64.7% |
8 | Qimonda | 10.0 | 0.1% | 62 | -83.9% |
NAND市場全体 | 13906.1 | 100% | 12360 | 12.5% |
トップ8中6社が売上増を果たし、全体で前年比12.5%増を記録したが、「2008年のNAND市場の先行きは厳しく、サプライヤーは郷愁の思いと共に2007年を振り返ることになりそうだ」(iSuppli)という。その兆候は、すでに第4四半期の数字に現れている (単位は100万USドル)。
07Q4 | 企業名 | 07Q4売上 | 07Q4シェア | 07Q3売上 | 成長率 |
---|---|---|---|---|---|
1 | Samsung | 1640.1 | 40.3% | 1675 | -2.1% |
2 | Toshiba | 1108.9 | 27.2% | 1132 | -2.1% |
3 | Hynix | 760.9 | 18.7% | 806 | -5.6% |
4 | Micron | 294.9 | 7.2% | 285 | 3.3% |
5 | Intel | 147.0 | 3.6% | 132 | 11.4% |
6 | ST Microelectronics | 89.2 | 2.2% | 91 | -2.0% |
7 | Renesas | 27.9 | 0.7% | 46 | -39.8% |
8 | Qimonda | 1.0 | 0.0% | 2 | -50.0% |
NAND市場全体 | 4069.9 | 100% | 4170 | -2.4% |
競争激化に伴う価格下落の影響が前期比2.4%減という結果となった。唯一売上増を記録したMicronとIntelについては「合弁事業を通じて爆発的な生産ユニット増を達成したことが、価格下落の影響を打ち消した」という。合弁による生産効率化が奏功した形だ。ただし経済不安と、それに伴う消費者支出の低下がNAND需要の下落につながっており、供給過剰がさらなる価格下落を呼び込む悪循環をiSuppliは指摘している。
iSuppliが独自のソースから得た情報によると、Appleが2008年のNANDの発注見通しを大幅に削減し、サプライヤーに対して2008年の需要鈍化を伝えてきたという。同社はiPodシリーズやiPhoneを筆頭に、積極的にNANDフラッシュメモリをストレージに採用しており、iSuppliのOEM Semiconductor Spend AnalysisツールによるとAppleの2007年のNANDフラッシュ購入は市場全体の13.1%に相当する12億ドルだった。2007年に世界3位のNANDフラッシュメモリのOEMバイヤーであり、発注削減が事実であればNAND市場への大きな影響が予測される。なおAppleの発注削減を考慮するまでiSuppliは、2008年のAppleのNAND購入が前年比32.2%の伸びとなり、NAND市場の成長を後押しすると期待していた。
iSuppliは今回、一時27%と予想していた2008年のNAND市場の成長率が一桁台に落ち込む見通しを示した。NAND価格はすでにサプライヤーの総コストを下回っていると見ており、さらに2008年のNAND製造への設備投資が前年比20%以上になると予測する。加えて需要の弱まりがサプライヤーの業績をひっ迫する。iSuppliのディレクター兼チーフアナリストであるNam Hyung Kim氏は「これらの要因を考え合わせると、NANDサプライヤーは第1四半期に損失を計上する可能性が高く、第2四半期に再び利益を上げるのも容易ではない」と警告する。「今年後半に経済が活気を取り戻さないかぎり、昨年のDRAM市場の惨事がNAND市場で繰り返されるだろう」と述べる。
Samsung、Hynix、Micronなど、いくつかのメモリ・ベンダーはNAND市場が落ち込んだとしてもDRAMへの製造シフトでカバーできるが、DRAM市場の成長率 も4%程度にとどまるとiSuppliは予測する。「NAND産業にとって唯一の希望はDRAM価格の回復だが、今後数カ月のうちに起こるとは考えにくい」としている。