マイクロソフトは、情報セキュリティ業務に従事しているITエンジニアを表彰する「Microsoft IT Security Award 2008」授賞式を開催し、受賞者から選ばれた8人に賞状を手渡すとともに、その中の4人に「監督賞」「主演少」「新人賞」「審査員特別賞」としてオスカー像(に似たトロフィー)が贈られた。同社では、こうした賞を設けることで、ITエンジニアがセキュリティの重要性を広めていく一助にしたい考えだ。
今回の賞は、政府の情報セキュリティ政策会議が定めた「情報セキュリティの日」(毎年2月2日)にあわせ、関連企業・団体が実施している「みんなで『情報セキュリティ』強化宣言!」の活動の一環として、事務局長のマイクロソフトが開催したもの。
企業内で情報セキュリティ業務に従事するITエンジニアを対象に、Webサイト上でクイズ形式の問題を出し、満点をとった人に賞を贈り、エンジニアの知識を表彰するとともに、企業内でセキュリティの重要性を訴える際の後ろ盾となるような賞を目指した。
マネジメント層を対象とした監督賞、現場のエンジニアを対象とした主演賞、新人に贈られる新人賞、そして審査委員長のマイクロソフト高橋正和 チーフセキュリティアドバイザーが選ぶ審査員特別賞の4つの賞が用意された。サイトは21万回以上閲覧され、クイズへのエントリー数は9,295回、参加人数は4,708人に達した。そのうち満点で賞を受賞したのは1,244人だった。
受賞者の一人が、「セキュリティのプロからすると問題は簡単だった」というとおり、用意された設問自体は難問ぞろいというわけではなく、「セキュリティのプロではなく、より一般のエンジニアを対象にした」(高橋氏)ことで、幅広いエンジニアの参加を目指したのだという。
授賞式では、米映画祭のアカデミー賞で贈られるオスカー像に似たトロフィーが用意され、今後も賞を続けていきたい考えが示されるなど、マイクロソフトも本気で取り組んでいる。実際、アカデミー賞のオスカー像を作るメーカーに依頼して「少し違いはあるらしいが、ほとんど一緒」(同)というデザインで18金のトロフィーを作ったのだそうだ。
受賞者の一人で、富士ゼロックス北陸の森正彰さんは「セキュリティは仕事のベースになっている」という現状で、企業のセキュリティに対する意識と、マイクロソフトが訴えるセキュリティの重要性との間に温度差があると指摘。積極的にセキュリティに関して学んでいるという森さんは、そうした状況の橋渡しになれればと今後の抱負を語ったほか、「賞をもらったからにはもっと勉強する」と意気込んでいた。
新人賞を受賞した某社で銀行系のシステム開発をしている中村太祐さんは、システム設計の後半でセキュリティの問題を発見して大変だったという思い出を話しつつ、「上流工程でセキュリティのことを考えるのは簡単だが、実際に作る側がセキュリティを理解しているとは限らない」と、セキュリティの難しさを指摘した。
マイクロソフトでは、今回の賞の目的のひとつとして「セキュリティの裾野を広げること」(同)を挙げている。現場だけでなく経営層も対象にし、社員同士で話し合いながら問題を解いていくことで、セキュリティへの意識を向上させることも大きな目的だったという。寄せられた意見などを見ると、マイクロソフトの目的はある程度達成できた模様だ。
「セキュリティは、生真面目にやるだけでなくユーモアも必要」と高橋氏。キャラクターになつかしの「なめ猫」を起用したり、オスカー増を模したトロフィーを「けっこうな額」(同)で準備するなど、マイクロソフト側もユーモアの意識で望んだ結果、参加者の間からも好意的な反応が多かったようで、来年以降も賞を続け、この賞に一定の評価が得られるようにしていきたい考えだ。