東芝は19日、NAND型フラッシュメモリ生産のための新工場建設予定地として三重県四日市市ならびに岩手県北上市の2カ所を決定したことを発表した。投資額は総額で1兆7,000億円を超す金額が見込まれている。
四日市の新棟は既存の同社四日市工場の隣接地に建設される。また、北上の新棟は、岩手東芝エレクトロニクスの敷地内に建設される。2棟同時着工を決断した理由を、同社代表執行役社長の西田厚聰氏は、「NAND型フラッシュメモリの市場が大きく拡大する中で、単に量産規模を確保するだけでなく、需要の急増に応変できる体制の構築が必須であった」とし、「昨年秋口からの急激な価格下落の影響もあるが、将来にわたる事業の成長を考えると、ここで投資の手を緩めるわけにはいかない」とその意義を語る。また、この新棟建設には、従来のNAND型フラッシュメモリの次にくる3次元メモリのような次世代メモリの生産拠点を他社に先んじて整備するといった意味も込められている。
四日市と北上の製造棟は、建築の検証や設計、各種の許認可手続きを経て2009年春頃をめどに、ほぼ同時に建設に着手、2010年春頃の竣工を予定している。建設される2棟のうち1棟についてはSanDiskとの間で、共同運営および2010年の量産開始に関する基本計画について合意がなされている。両社は、新棟の稼働に伴い、NAND型フラッシュメモリの市場40%を目指す。また、東芝では残る1棟についても、SanDiskの参画の可能性について協議を行っていく予定だ。
建設される新棟で採用されるプロセスルールは現時点では未公表としているが、東芝では43nmプロセスを採用した16Gビット品のサンプル出荷をすでに開始していることから、少なくとも43nm、もしくは次世代プロセスとなる32nm近傍のプロセスが採用されることが見込まれる。また、生産能力は、「まだ建屋の設計も終えていない段階なので決定していない」(同)としながらも、各製造棟ともに月産15万~20万枚程度を見込んでいるとした。
なお、今回の新棟建設決定に伴い、西田氏は「新製造棟の速やかな立ち上げに伴う供給能力の拡大、市場の変化にフレキシブルに対応できる生産体制の構築とともに、技術開発でも市場をリードし、NAND型フラッシュメモリおよび次世代メモリにおける競争力を強化していく」とNAND型フラッシュメモリ事業にかける意気込みを述べたほか、「この将来を見据えた事業展開により、市場でのリーダーの位置を確固たるものとし、利益ある持続的な成長を実現していきたい」と、今後の事業展望を語った。