フィンランドNokiaと独Siemensがネットワークインフラ事業で立ち上げた合弁会社、Nokia Siemens Networksは2月11日(現地時間)、スペイン バルセロナで開催された「Mobile World Congress 2008」でプレス発表会を開き、合併後の経過、事業の見通しを発表した。また、自社がスポンサーとなった「Connectivity Scorecard」というオンライン活用度を測定する指標の結果を紹介、オンライン時代が実現するには、まだまだネットワークインフラが不足しているとした。

NokiaとSiemensがそれぞれのネットワークインフラ事業を合併させる計画を発表したのは、2006年のこと。当初の計画より遅れたものの、Nokia Siemens Networksとして2007年春に正式にキックオフした。

Nokia Siemens Networks CEO Simon Beresford-Wilie氏

同社のCEOであるSimon Beresford-Wilie氏は、まずネットワークインフラ市場全体の動向をまとめた。固定、無線ともにネットワークインフラ市場は成長率が鈍化しており、今年も市場全体の成長はあまり期待できないが、インターネットのユーザー数は爆発的な増加が見込まれているという。多くはインド、中国などの新興市場だ。「2015年には50億人がインターネットに接続し、このうち40億人はブロードバンドを利用する」とBeresford-Wilie氏は語る。これにより、トラフィックは100倍増となり、これに対応するにはイノベーションが必要であるとした。

Nokia Siemensの2007年第4四半期の売上高は46億ユーロ(約7,277億円)で第3四半期から25%増加した。今年は合併のシナジーとして、20億ユーロ(約3,164億円)の削減を目指すという。

2008年のトレンドとしてBeresford-Wilie氏は、無線側ではHSDPA、LTE(パイロット)、固定側ではFTTHなどの光ファイバ、アプリケーション側ではIPTVなどを紹介した。市場全体では、競争はさらに激化すると予想。チャンスと課題が入り混じった状態で、同社の戦略はポートフォリオの拡大と執行とした。基地局では、小型とエネルギー効率を特徴とするモジュラタイプ基地局「Flexi Multimode」ラインをプッシュする。サービス事業も重要視しており、100以上のソリューションを提供している。また、この日は顧客管理技術を提供する英Apertioの買収完了を発表したほか、モバイル広告サービスソリューションの追加も行った。LTEでは、Flexi Multimodeを土台とするエンドツーエンドソリューションを発表、2008年第3四半期よりWCDMA/HSPAを、2009年後半にLTEにアップグレード可能とした。既存のGSM/WCDMAからのマイグレーションを完全に支援するという。

また同社は、世界のICTインフラと活用度を評価するスコアカード「Connectivity Scorecard」の紹介を行った。同社が出資し、ロンドンビジネススクール教授のLeonard Waverman氏が中心となって開発、測定した。

「Connectivity Scorecard」を開発したロンドンビジネススクールのLeonard Waverman教授

固定、無線、ブロードバンド、コンピュータ技術、アプリケーションなど約30の指標を用い、コンシューマインフラ、コンシューマの利用、ビジネスインフラ、ビジネスにおける利用とスキル、政府インフラ、政府利用の6つの面から社会的、経済的影響を10点満点で評価した。

国際電気通信連合(ITU)、Economist Intelligence Unit(EIU)などがデジタルに関連した指標を出しているが、Waverman氏によると、企業分野を入れた点、成長要因としてのオンラインにフォーカスした点、アプリケーションなどオンラインがもたらす恩恵までトータルに評価した点などで異なるという。

イノベーション型経済では、第1位は米国でスコアは6.97。2位はスウェーデン(6.83)、日本は第3位(6.8)となった。4位以下にはカナダ(6.5)、フィンランド(6.1)、英国(6.1)などが続く。

エネルギー資源型経済では、ロシア(6.11)、マレーシア(5.82)、メキシコ(4.37)がトップ3。中国は6位(3.42)、インドは8位(1.68)となった。

「Connectivity Scorecard」成長国を集めたイノベーション型経済のランキング

「Connectivity Scorecard」開発国を集めたエネルギー資源型経済のランキング

Waverman氏は「全体として満足なスコアを出した国はない」とまとめる。中でも、他の指標では上位にランクインする韓国が10位(4.78)と「驚きの結果」となったことについて、Waverman氏は、「政府が強力に推進するインフラなど、ほとんどの点で高いランクとなったが、高度サービスを活用する企業は実際に少なかったため」と説明する。

同調査結果を見たBeresford-Wilie氏は、「ブロードバンドのキャパシティはまだ不足している」と感想を述べている。モバイルブロードバンドの普及率が高くても、固定側が低いなど、いつでもどこでも接続するインフラはまだ完備されておらず、それを活用して成長するレベルには達している国は少ない段階だ。

ネットワークインフラ市場は数年前から難しい局面を迎えており、大型合併、買収が相次いでいる。先日も、NECが仏Alcatel-Lucentと合弁企業立ち上げ計画を発表したばかりだ。市場は伸び悩むが、要求は高い。ベンダー各社は当面、厳しい課題を背負うことになりそうだ。