SAPジャパンは、2008年度の販売戦略を示した。パートナーとの協業をさらに推進するとともに、2007年末に設立した「カスタマーイノベーションセンター」を拠点に、製品の「日本化」を強化する。また、GRC/BPP(Business Process Platform)などのビジネスアプリケーション、独SAPが買収した米Business Objectsの製品、技術を軸にしたBIなどのソリューションを一層拡充、2010年にはビジネス領域の売り上げを、2005年比で2倍にすることを目指す。
2007年の同社は、売上高が前年同期比14%増の711億7,000万円、ソフトウェア関連売り上げは同21%増の539億3,000万円だった。全世界規模では、売上高が同13%増の1兆6,318億円、ソフト関連は同17%増の1兆1,784億円となっており、成長率は日本が上回っている。2007年には、同社にとって新しい領域が伸長した。エンタープライズSOA(Service Oriented Architecture)/BPPの推進戦略が奏功、NetWeaverとその関連製品の売り上げは2.3倍になるとともに、GRC/CPM(Corporate Performance Management)ビジネスは3.8倍になったとしている。
BPPは、同社のエンタープライズSOAを具現化する手段で、ERPなどのアプリケーションだけでなく、各企業独自のシステムをも含め、「部品化」し、サービスとして活用できるようにする。GRCはGovernance(統制)、Risk(危機)、Compliance(法令順守)についての製品体系が整えられたもの。CPMは、BIから一歩進んで、企業の業績を多角的に捕捉、分析して、その結果から問題点を発見したり、経営戦略の洗練、改善のために積極的に活用することを図る発想だ。
同社の社長兼CEOである八剱洋一郎氏は「GRCという新たなソリューションのビジネスは、2007年非常に大きな注目を集めた。この分野は、従来どちらかといえば、会計などのアプリケーションの付随的な存在だったが、日本版SOX法が求める内部統制を整備しようとの機運の波で、重要なテーマになった。GRC製品は、2007年前半にはほとんど実績がなかったが、後半から売れ始め、今や、GRCの切り口からSAP製品を検討しようという例さえある」と話す。
昨年12月に設置したカスタマーイノベーションセンターは「顧客に近い視点で、顧客が求める製品、ソリューションを提供していく」(八剱社長)ための施設だ。中でも重要な任務は、SAPの標準ソリューションの「日本化」といえる。これまでにも「日本発」の開発はすでに実績をあげている。「例えば、国内では、締め請求は相手の締めに合わせることが当たり前だが、海外ではそうだとは限らない。SAPジャパンから、独SAPに対し、このような点を盛り込むことを要求した」(同)という。このほか、帳合、食品業での賞味期限管理など、日本の商習慣や、他国より厳しい基準に適合した機能などの搭載の事例はすでにあり「さらに増やしていきたい」(同)考えだ。
エンタープライズSOAをいっそう普及・拡大させるためには、中堅・中小企業向けへの浸透を重点化しなければならない。そこで同社は中堅企業向けに「SAP Business All-In-One」を投入した。60業種、17ソリューションに絞り込んだパッケージERPだ。八剱社長は「SOAは総コストがわかりにくいとの不満の声があった。SAP Business All-In-Oneは、総パッケージの費用や、稼動までの期間などを明確にして提案したところ、好評を得ている」と語る。
また、独SAPでは、本格的なSaaS型製品「Business ByDesign」を2007年9月に発表しているが、日本では、まだあまり動きがない。これは次のような背景と理由がある。「SAPは、大手企業を偏重している、との印象が日本では特に強い。しかし、Business ByDesignは、中堅より少し小さい、といった規模の層を念頭に置いている。日本市場では品質への要求は厳しいので、拙速に商品化するのは得策ではない」(同)。ただ「需要は間違いなくある」(同)ため、同社では「年央くらいまでは、まずパイロットケースとして、いくつかの顧客に試用してもらい、手応えが出てきたら発表する」(同)方針だ。
八剱社長は「2007年の1年間の取引を振り返ってみると、大手向けでは半数近くがまったくの新規だった。これは他の先進国ではみられない傾向だ」と指摘、日本市場は依然、潜在力があり、まだまだ成長の余地が大きいと見ており、2007年に1,882人増員し、現在1万1,123人いる「SAP認定コンサルタントはさらに2,000人程度増やす」(SAPジャパン シニアバイスプレジデント パートナー本部長 安田誠氏)など、積極姿勢を示す。これまで以上の伸長を図るにはパートナーとの協調は不可欠だ。これまでに7社のパートナーがエンタープライズSOAの専任組織を設置しているが「前年度比の伸びでは、SAPを上回っているパートナーは多い」(同)状況で、さらに新規パートナーを開拓する意向だ。