NECのグループは、非常に広い可変範囲を有するリコンフィギュアブルCMOSベースバンドICを開発し、発表した(講演番号3.1:A Widely-tunable reconfigurable CMOS Analog baseband IC for software-defined radio)。通信方式に伴って必要となるフィルタの特性は様々である。例えばWCDMAでは広い帯域で緩やかな減衰特性を有するフィルタを必要とし、GSMでは狭い帯域で急峻な減衰特性のフィルタが必要となる、などである。

これら様々な通信方式に対応するするフィルタを実現するために、従来は個別にフィルタを用意するなど回路面積を必要としていた。この発表は、一つのフィルタトポロジーで複数の特性と広い遮断周波数可変範囲を実現する方法を提案している。

実現のために「トランスコンダクタンスアンプ (OTA) のトランスコンダクタンスの値(gm)をスイッチングのDuty比でコントロールする」という技術を提案している。また、この技術のために必要な回路ブロックとして「Variable duty-cycle Pulse genrator」を提案している。

これらの回路技術により、フィルタを構成しているgmやCをDuty比でコントロールできる、すなわちディジタル的に処理が可能となる。gmやCをコントロールできるので、フィルタの特性(バターワース、チェビシェフ、エリプティック)も同時に可変でき、従来の遮断周波数のみのコントロールではなく、同時にフィルタ特性(フィルタの次数も含む)も可変できる。

実際に90nm CMOS process、1V電源で試作をして特性を評価している。結果は以下の通りである。

  • 遮断周波数400kHz - 30MHz の可変範囲を実現
  • 遮断周波数10MHz、2nd-orderのbutterworth Elliptic Chebyshevを実現
  • 遮断周波数10MHz、4th-orderのbutterworth Elliptic Chebyshevを実現

この周波数可変範囲とフィルタの特性はbluetooth、802.11、WCDMA、GSM、GPSなどのフィルターに応用できる。