Wind RiverとNECエレクトロニクスは6日、Wind RiverのLinux OS「Wind River Linux 2.0」をNECエレクトロニクスの半導体プラットフォーム「platformOViA」へ移植したことを発表した。移植が完了したのは携帯機器向けアプリケーションプロセッサ「MP201」および携帯電話用システムLSI「Medity M2」の2製品。

セット開発におけるplatformOViAの位置付け

NECエレクトロニクスのソフトウェア推進室長 光岡誠治氏は、今回の提携について「従来はハードウェアのみを提供していたが、この提携によりセット製品の開発に必要なOS、ミドルウェアなどの基本的なソフトウェアも併せてプラットフォームとして提供できるようになった」と語る。platformOViAにWind River Linuxが移植されたことにより、同OSとセットになったMP201ないしMedity M2がパートナー各社に提供されることとなる。また、これに併せ、Medity M2のBSP(Board Support Package: LSI/ボード用のドライバ一式)の開発も併せて完了、パートナー各社に提供される。NECエレクトロニクスのソフトウェア推進室 シニア・エキスパート 桑原一悦氏は「セットメーカーとパートナー企業に同じものを提供することにより、パートナーが開発したものをすばやくセットメーカーに届けることが可能となる」と、その効果を語る。

NECエレクトロニクス ソフトウェア推進室長 光岡誠治氏

NECエレクトロニクス ソフトウェア推進室 シニア・エキスパート 桑原一悦氏

Wind Riverは、日本地域においてデジタルAV分野に注力しており、NECエレクトロニクスとの協業も、同分野でシェアを拡大するための足がかりの1つ。今回の連携に関して、ウインドリバー 代表取締役社長 藤吉実知和氏は、「Wind Riverは、ネットワークや航空宇宙産業とは長い付き合いがあるが、コンシューマ分野、特に日本で展開する上で、我々を導いてくれるような半導体デバイスメーカーが必要であった」と語る。また、世界市場への展開を図るNECエレクトロニクスとしても「ワールドワイドで強みを持つWind Riverは最適な相手」(NECエレクトロニクス ソフトウェア推進室 チームマネージャー 巣山浩生氏)としている。

ウインドリバー 代表取締役社長 藤吉実知和氏

移植されたWind River Linux2.0は2007年12月にバージョンアップされたもので、Linuxカーネルは2.6.21、開発環境はGCC(GNU Compiler Collection)4.1.2となっている。また、Platform for Consumer Devicesが拡張されており、ルートファイルシステムフットプリントの縮小やカーネルブート時間の短縮が図られている。さらに、リアルタイム性に対応するためのプラグインとして「Wind River Real-Time Core5.1」が用意されている。

今後の展開については、プロモーションならびに開発に関する協業の強化を図るとしており、「携帯電話のオペレータやセットメーカーに対し、両社が共同でプロモーションを行っていきたい」(桑原氏)とした。具体的には、共同プロモーションとして、欧州携帯電話オペレータへ基本プラットフォームとして提案していく。また、次世代モバイルシステムの構築も進めていくという。さらに今後は、対応が完了した2つのデバイスに続き、デジタルAV用LSI「EMMA」への移植も進めていく計画だ。