2008年のInternational Solid State Circuits Conference(ISSCC)が3日(現地時間)、米サンフランシスコで開幕した。4日よりテクニカルセッションがスタート、マイクロプロセッサのセッションでIntelが次世代Itanium Processor "TukWila"について発表した。

TukWilaは、Quad CoreのItaniumプロセッサであり、Dual CoreのMontecito、Montvaleの発展型と位置づけられる。このためプロセッサコアのマイクロアーキテクチャはMontvaleと同様だが、キャッシュメモリやインターコネクトが異なっている。トータルで30MBのキャッシュメモリを搭載しており、Montvaleより10%ほど多くなっている。コアの数が倍増し、トータルのキャッシュメモリの量も増えていることから、総トランジスタ数も増えており、20億5000万トランジスタを搭載する。このトランジスタ数は商用プロセッサとしては史上初とのことだ。ただし、Dual CoreのMontecitoが17億2000万トランジスタであることから、コア当たりのキャッシュの量はむしろ減っている。どのような構成になっているか見てみよう。

キャッシュメモリ容量の比較

CPU TukWila Montecito
L3$ 6MB/Core 12MB/Core
L2I$ 512KB/Core 1MB/Core
L2D$ 256KB/Core 256KB/Core
Directory$ 1.9MB/Die --

コア当たりのキャッシュメモリの量を半減させ、65nm 8Metalプロセスを用いてもダイサイズは700平方mmに達しており、チップサイズとしては限界であり、これ以上のキャッシュメモリの搭載は難しかったものと思われる。

トランジスタ数の比較

CPU TukWila Montecito
コアロジック 4億3000万 1億6350万
L3キャッシュ 14億2000万 15億5000万
その他 1億9600万 670万
合計 20億4600万 17億2000万

Montecitoは、11-issue 2-way TMT EPICコアを2つ搭載しているので、TukWilaは、4コアで8スレッドを並列実行できるプロセッサとなる。Montecitoは90nmプロセスの製品であり、動作周波数は1.67GHz、TDP 104Wだった。対するTukWilaは65nmプロセスで2GHz動作、TDP 170Wと発熱も増えるが、性能比で約2倍を達成している。

しかし、TukWilaの大きな改良点はコア数の倍増だけではない。チップ間インターコネクトに次世代のQuickPathをいち早く採用、ピークバンド幅は96GB/sに達する。これは、Montecitoの8.53GB/s、Montvaleの10.67GB/sと比べても格段に高いバンド幅となっている。また、メモリにはFBDIMMを採用し、2つのメモリコントローラを搭載し、4チャネルのFBDIMMインタフェースを持つことから34GB/sのメモリバンド幅を持つ。これはMontvaleの6倍に当たるという。NECのスーパーコンピュータSX-8iのメモリバンド幅が64GB/s。及ばないとはいえ、匹敵するメモリバンド幅を実現していることになる。

その他、Montvaleから導入したPower-Frequencyマネジメントシステムも引き続き実装されている。これはMontecitoで導入を予定していた「FOXTON」なのか、と聞いたところ、その発展系ではあるが、オフィシャルにはFOXTONの名称は使っていない、との事だった。

Itaniumか、Xeonか、と問われることがある。時にHPが提供している「HP Integrity NonStopサーバ」は、最小構成でも1台1億円以上もする高価な、しかし極めて厳重な信頼性と可用性を備えたサーバで、サーバの一時停止や、データが1bitたりとも化けては困る金融サービス等で重宝され、近年売り上げを伸ばしている。このサーバで使われているプロセッサがIntelのItaniumである。同社では、Xeonシリーズに勝る信頼性がItaniumシリーズの採用に至っていると述べる。IT社会が発展するにつれて、極めて信頼性が高く厳格なサービスを提供する必要に迫られてくる。そんな時に、その中核となるプロセッサとして、ディペンダビリティが求められてくることは明らかだ。プロセステクノロジのシュリンクに伴って余裕が出てくるトランジスタバジェットを、パフォーマンスの向上に振り向けるか、それともディペンダビリティに振り向けるか、では設計コンセプトが大きく異なってくる。そこで、Xeonとは違ったItaniumの存在価値が生まれてくるのではないだろうか。