ビジネスソフトの著作権保護支援や、啓蒙活動などを行う非営利団体「BSA(ビジネスソフトウェアアライアンス)」は、2007年に寄せられたソフトの組織内違法コピーについての情報提供が過去最多の506件に上ったことを明らかにした。2006年の国内での違法コピー率は25%で、前年同期比3ポイントの減だったが、被害額は逆に同18.9%増の2,140億円であったほか、インターネットのオークションサイトでの模倣品、海賊版販売の手口がより巧妙になるなど、違法コピーの被害は依然深刻な状況であることから、BSAでは2008年、組織内のソフト資産管理支援、オークションでの消費者保護などを特に強化していく方針を示している。

BSA日本担当顧問で弁護士の石原修氏

BSAは、企業、団体、教育機関などさまざまな組織内で発生する違法コピーについての情報提供を受け付ける窓口を設けているが、2007年に同窓口に寄せられた情報は同34%増で過去最高となる506件だった。2006年は376件、2005年は345件、2004年は203件であり、この3年ほどで2倍以上に増えている。情報提供の多い業界は1位がソフトウェア関連で101件、2位は広告・出版関連の41件、次いで土木・建設関連の22件となっており、これら3業界で全体のおよそ3割を占めている。情報提供の件数が増えたことについてBSA日本担当顧問で弁護士の石原修氏は「正義感が大きな理由であると考えている。ここ数年、企業の法令順守が叫ばれており、経営者以上に、従業員の間にこの発想が浸透したのではないか。2006年には、企業の法令違反などを通報した社員の保護、支援する公益通報者保護法も施行されている」としている。

国内では違法コピー率は減少傾向にあり、2003年は29%、2004年、2005年は28%、2006年には25%になったわけだが、この数値は全世界で3番目に低いという。ただ、被害額をみると、2003年が1,800億円、2004年は1,900億円、2005年は1,800億円で、2006年の2,140億円というのは、世界ワースト5位だった。全世界の規模でいえば、違法コピー率は35%で、20003年以降2006年まではほぼ横ばいだったが、2006年にはやはり被害額が膨らみ、同16.1%増の395億ドルだった。

この結果について、石原氏は「国内で違法コピー率が低下したのは、ソフトウェア資産管理の発想や、法令順守志向の高まりが影響しているのではないか。数字が低くなったこと自体は喜ぶべきことだが、それでもまだ全体の1/4もある。さらに減らすべきだというのが実感だ」と話す。

BSA日本担当事務局長 竹下千恵氏

BSAではオークションサイトでの違法品被害合意活動に取り組んでおり、2006年から、ヤフーの「Yahoo!オークション知的財産保護プログラム」に参加、違法出品のモニタリングなどを実行するオークションサイトパトロールを実施してきたが、オークションサイトの利用者が拡大するなか「模倣品や海賊版販売の手口が巧妙になってきた。当該のオークションサイトから、別の不正サイトへの誘導といったやり方もみられた。画面を見ただけでは、違法品かどうかわからないが出品者とやりとりするうちに、違法品だと判明したこともあった」(BSA日本担当事務局長 竹下千恵氏)状況であり、2008年には、活動をさらに強化する方針で「売る側の抑制には効果があがっているが、買ってしまう人々がおり、教育、啓発に力を入れていきたい」(同)考えだ。

また、2008年度の活動として、企業・自治体に向けたSAM(Software Asset Management:ソフトウェア資産管理)の支援に注力する。BSAによれば、SAMとはソフトウェアに関連・起因するさまざま危険因子を総合的に管理することを目指し、導入ソフトウェアのインストール数、ライセンス数を正確に把握することから始まり、所有ライセンスに準拠した、正当なソフトウェア使用がなされているかどうかを検証する。2007年にもSAMについての活動は行われていたが「非常に関心が高くなっている」(石原氏)一方、「企業、組織では、パソコンが何台あり、どんなソフトウェアがインストールされているか、正確に認識しておらず、ライセンスを漫然と放置している例も少なくない」(同)という。

2007年に国内のすべての大学を対象にしたSAM活動を通じて、BSAでは「関心があり、意識が高くても、実際どうすればよいのかというノウハウが不足していては、具体的にSAMに着手できないことがわかった」(竹下氏)ことから、「組織形態、業界にかかわらず、SAM支援の必要性は大きい」(同)と判断、2008年にはSAM支援の対象を、すべての企業、自治体にまで広げる。BSAでは、SAMを実行する上で管理の実態を計るための基準である「BSA評価プログロム」を用意しており、これを基に、自社でSAMの状況をチェックできるマニュアルの提供や、啓発のためのセミナー、戸別訪問による支援などの策を講じていく意向だ。