ソニーは2007年度第3四半期(2007年10 - 12月期)の連結決算を発表した。売上高は対前年同期比9.6%増の2兆8,590億円、営業利益は同5.8%増の1,894億円、税引前利益は同60.4%増の2,885億円、当期純利益は同25.2%増の2,002億円で、売上高、税引前利益、当期純利益などは四半期としては過去最高となった。主力のエレクトロニクス分野は売上高が前年同期比で2桁成長するとともに、営業利益も過去最高だった前年同期に次ぐ実績をあげた。さらに、苦戦していたゲーム分野が黒字転換を果たした。一方、不振のリアプロジェクションテレビからは2008年3月で撤退することを明らかにした。

分野別の業績

有機ELで巻き返しを狙うテレビ事業

エレクトロニクス分野の売上高は四半期としては過去最高の、同10.2%増の2兆694億円、営業利益は同7.0%減の1,665億円だった。全世界で売り上げ増となった液晶テレビ「BRAVIA」とパソコン「VAIO」、海外市場で販売好調だったデジタルカメラ「サイバーショット」などが増収で、同分野を牽引した。

エレクトロニクスは増収ながら減益

だが、営業利益は減少した。ユーロに対する円安が追い風になったものの、コスト改善を上回る価格下落などのあおりを受けたことが要因だ。「VAIO」は増益だったが、システムLSIはゲーム機向け半導体の売上げ減、「BRAVIA」は単価下落により、それぞれ減益となった。

ソニー 執行役EVP兼CFO 大根田伸行氏

テレビ事業は売上高が同19.5%増の5,080億円、営業利益は同69%減の40億円だ。同社の大根田伸行執行役EVP兼CFOは「液晶テレビは上期にはかなり赤字だったが、それは商品力に問題があったから。秋モデルの製品は競争力があり、下期には利益が出ているが、上期の赤字を埋め切れなかった」と話す。液晶テレビは、価格下落の向かい風が依然厳しい。「地域により異なるが、総じて、40インチでは年間25-30%、中型では同じく20-25%下がっている。年間の低下率は想定内だが、下がり方が早めになることが大きなインパクトになる。液晶テレビの価格低下の速度に、コスト削減が追いついていない」(大根田執行役)状況で「液晶テレビは年間では利益は出ていない」(同)

下期に液晶テレビが黒字化したもう1つの理由は、販売量が増えたことだ。「第3四半期には、だいたい月間120 - 130万台ほどだった。この水準であれば現在の価格でも利益は出る」(同)。コスト改善も進んでいる。「液晶パネルについては、S-LCD(ソニー、サムスン電子の合弁による製造会社)の第8世代の生産ラインでは大型パネルが月産5万枚になる。このコスト優位性のあるパネルが使える。また、シャーシ共通化、部品点数削減などを地道にやる。今期の損益均衡は難しいが、来期は必ず黒字化する」(同)見通しだ。

またテレビ事業では、リアプロジェクションテレビに見切りをつける一方で、有機ELに注力する方針を示した。大根田執行役は「有機ELテレビは未だ、月産2,000台という状況で、今後すぐに、大幅に伸長し、ビジネスに結びつくとは思っていないが、当面、ビジネスとしては液晶を推進して、投資は有機ELに集中させていく。液晶は今後も大きく伸ばすプラットフォームだと考えている」と述べた。有機ELテレビは「大型化、アプリケーションの多様化をしていくが、時期は未定」(原直史コーポレート・エグゼクティブSVP)だ。

映画大手の米ワーナー・ブラザーズが支持を表明、意気が上がるBlu-ray Discについては「収益性の点では、ハード関係は今期、かなり赤字だとみているが、パッケージメディアでは利益が出ている。ただ、両方をあわせても、赤字は100億円規模だ。黒字化を目指すには、ある程度の数量が出なければならない。Blu-ray Discではキイデバイスをもっているので、コンテンツの売り上げ増で、できるだけ早期に黒字化したい」(大根田執行役)考えだ。

ゲームは黒字化 - PS3の損失圧縮、好調なPSP新機種、底堅いPS2も下支え

ゲーム分野の売上高は四半期としては過去最高の同31.2%増の5,812億円、営業利益は129億円(前年同期は542億円の赤字)で、課題だったこの分野で黒字化を達成した。ハードでは、低価格化した機種を投入した、プレイステーション3(PS3)の売上げ台数が全世界合計で同2.95倍の490万台に上り、増収に貢献するとともに、PS3は損失が大きく縮小したため、ゲーム分野の営業損益が黒字化した。これは「PS3のコスト低減化が進み、粗利の損失が減った」(同)ことが大きな要因だが、依然「(製造コストが価格を上回る)逆ザヤは解消していない」。大根田執行役は「逆ザヤ解消は今期中は無理だが、来年度後半のどこかの時期で損益均衡にすることが目標」と話している。

PS3苦戦で、赤字だったゲーム分野が黒字転換

そのほか、ゲーム分野では、薄型/軽量の新製品が発売されたプレイステーション・ポータブル(PSP)が同22%増の576万台を売上げ、増収に寄与した。プレイステーション2(PS2)は同20%減の540万台だったが「減益ではあるが、この分野全体の利益には貢献」(同)している。ソフトの売上げ本数では、PS2が同23%減の6,090万本、PSPは同14%減の1,830万本だったが、PS3は同4.91倍の2,600万本となり、PS2、PSPの減収分を吸収、全体では増収だった。

PS3は、本格攻勢への芽が見え始めたが「上期の出遅れをカバーできなかった」(同)ことから、通期の販売台数見込みは、10月時点での1,100万台を950万台に下方修正した。逆に、PS2は1,200万台を1,300万台に、PSPは1,000万台を1,300万台に上方修正した。未だ、PS3が利益に貢献できないゲーム分野を、今年度は「依然、底堅く、東欧、中近東などの地域では伸びて」(同)おり、「プラットフォームとしてまだ強い」(原コーポレート・エグゼクティブSVP)PS2と新モデルで勢いづくPSPが支えたようだ。

エレクトロニクスが堅調、ゲームも黒字化した同社だが、通期の業績予想では、営業利益を下方修正している。10月時点では4,500億円と見込んでいたが、今回、4,100億円とした。これは、経済環境の変化によるものであるという。同社は2007年度下期の為替レートとして、1ドル-115円前後、1ユーロ-160円前後との見方を前提としていたが、最近の円高傾向で、第4四半期(2008年1 - 3月期)は、1ドル-105円前後、1ユーロ-155円前後と修正した。また国内の株式市場は今年に入ってから急激に冷え込んでおり、ソニー生命の転換社債の評価損益が悪化したことなどが背景にある。営業利益の下方修正で、通期の営業利益率は4.6%となり、目標としていた5%は達成できないが、大根田執行役は「オペレーションが悪かったわけではなく、ある程度不可抗力」としている。