半導体用露光装置メーカー大手の蘭ASMLは30日、2007年の業績および2008年の見通しに関する発表を行った。同社の2007年通期の売上高は前年比5.9%増の38億900万ユーロ(約5,998億円)、純利益は同10.1%増の6億8,800万ユーロ(約733億円)の増収増益となった。

同社日本法人のエーエスエムエル・ジャパン代表取締役社長の石綿宏氏は、「2008年は(量産チップレベルで40nm以下のパターンを解像できるArF液浸露光装置『TWINSCAN XT:1900i』の出荷を開始した)2007年に続き重要な年になる。技術にしてもビジネスにしてもArF液浸露光装置中心で進めていく」と語った。

エーエスエムエル・ジャパン代表取締役社長 石綿宏氏

同社のArF液浸露光装置はTWINSCAN XT:1900iで第5世代目となり、全世界に71台が出荷されている。主にデバイスの量産に用いられるのはTWINSCAN XT:1900iと前世代のTWINSCAN XT:1700iで、それらの地域別出荷状況は北米ではXT:1700iが13台、XT:1900iが6台、欧州ではXT:1700iが4台、XT:1900iが1台、アジアがXT:1700iが23台、XT:1900iが14台となっている。なお、日本地域の詳細は明らかにされていないが、14台のArF液進露光装置が納入されているという。

2007年の下半期だけで21台の出荷を果たしたXT:1900iについて石綿氏は、「XT:1900iは従来の新装置を発表した時に比べ、早い立ち上がりを見せている。また、需要も高まりを見せている」とし、「実際に量産に使われているかどうかは、これからを見てもらえれば理解してもらえるはず」と自信を覗かせた。

2008年の市場については、グローバル経済が弱含みで推移することを指摘、それに伴ってデバイス価格は下落することとなるが、価格下落を抑えるためにデバイスメーカーは取れ数を増やしコストを下げる必要が生じ、取れ数を増やすためには、プロセスの微細化を進める必要がある。そのため、石綿氏は「2008年のデバイスメーカー各社の設備投資は総じて縮小傾向とみられるが、(プロセスの微細化を担う)露光装置市場は影響を受けにくいのではないか」と指摘、「日本市場は若干成長する可能性もある」との見込みを語った。

同社は、「2008年は、ArF液浸露光装置の全社売り上げを前年比で2倍近くまで拡大する」(石綿氏)との見込みを立てており、日本でもArF液浸露光装置を中心にビジネスを拡大していくと意気込みを見せる。

また、日本地域への取り組みとして社会貢献を取り上げ、奨学金やインターンシップなどを実施したいとし、「日本の学生をASMLの開発部隊などで学ばせる機会を作れれば、文化的にもさまざまなことが学べ、グローバル化に適した人物になるはず」(石綿氏)と語った。

装置ロードマップに関しては、2008年末ごろにXT:1900iと同じ開口率(NA)1.35を用いた38nm以下のプロセスをターゲットとした次世代ArF露光装置を投入する計画としている。次世代機はスループットや重ね合わせ精度の向上が行われ、ダブルパターニングに対応することで微細なプロセスを実現する。液浸材料を水から変更することで、NAをさらに引き上げる露光装置の開発に関しては、現在、対応するレンズ材料の検討中であるとしており、第1四半期中に実現の可否を決めるとした。また、次世代の露光装置と目されるEUV露光装置に関しては、PPT(Pre-Production Tool:量産評価向け装置)を2009年末に提供する計画。PPTはNA0.25で、光源はLPP(laser produced plasma)方式を採用、出力は100Wを超すものが用いられる。スループットは1時間当たり60枚程度の計画で、すでに4社から受注を受けているという。

ASMLのリソグラフィロードマップ