マイクロソフトの「Office」が多角的な展開を続けている。「Office」は2006年頃から同社のエンタープライズアプリケーションのインタフェースとしての任務を負わされ始めてきたが、2007年に入り、そのような動きがさらに加速、Business Intelligence (BI)ツールなどの同社製品ばかりか、SAPのアプリケーションとの連携さえ「仲介」するまでになっている。今やこれらは、基幹業務システムと「Office」と企業内エンドユーザとを「つなぐ」ための新しいソリューションとの位置付けで「Office Business Applications(OBA)」と呼ばれる、1つの分野として確立されようとしている。
そもそも「Microsoft Office」は、ExcelやWordなどの、企業内の日常的業務で文房具のように利用されるアプリケーションをセットにしたいわゆるオフィススイート製品として登場したわけだが、改版を重ねるうち、1997年の「Office 97」を投入した時点で同社はOfficeもプラットフォームの1つであると考えるようになった後、2003年には「Office System」となり、統合サーバ群を取り入れることとなった。
OBAとは一定のソリューション群であり、Office Systemを業務システムとして活用することを目指す。操作性を向上させると同時に、基幹系システムのデータをプロセス活用できるようにしている。情報の再利用性を高め、効率化、生産性の向上を目的とする。
国内の企業は、IT活用による生産性向上が、米国に比べ相当遅れていると同社はかねてから指摘している。企業内情報システムや業務プロセスは、ERP、CRMなどの導入により、自動化、効率化が進んではいるが、実際の現場での業務の上では、非定型での、さまざまなやりとりが必要であり、さらには、基幹業務システムとデータ連携をしていくことは簡単なことではない。
OBAは、これらの問題点を解決するための策として提示される。まず、インタフェースを、多くのエンドユーザの間に浸透しているExcelなどのOfficeソフトやWebブラウザなどにしたことによる操作環境の改善で、操作法習得の負担が軽減されることが特徴だ。コミュニケーションでは「Outlook」、データ入力では「Infopath」、ビジュアル化では「Visio」が活用されることとなる。また、システム内でのデータ連携が促進され、再利用がしやすくなるほか、日本版SOX法、e文書法、新会社法、個人情報保護法などの法、諸制度整備に伴う、法令順守への対応強化と生産性維持が両立するという。
OBAは、BI/CPMの「PerformancePoint Server」、文書管理の「SharePoint Server」、データ連携の「BizTalk Server」、SAPと共同開発したミドルウェア「Duet for Microsoft Office and SAP」などで構成される。
これらの中でも、効率化の即戦力として注目されるのは「Duet for Microsoft Office and SAP(Duet)」だろう。Duetは、「Microsoft Office」をフロントエンドとして使用し、大企業を中心に広く浸透しているSAPのERPアプリケーションを利用できる。Outlookの予定表からの休暇申請、出張管理などが可能になるほか、予算管理、組織管理も担う。また、Excelを用いて、需要計画のデータにアクセスして、計画を分析することなども可能だ。Duetが国内で投入されたのは2007年7月、英語版は2006年6月に登場しており、OBAの代表的な製品といえる。
OBAにより、例えば次のような環境が構築される。営業要員が注文を受け、Excelにより「SAP ERP」のデータを用い、見積もりを作成、Outlookで承認の確認、受注登録などの作業にあたる。「SharePoint Server」がこれらを管理、監視し、「BizTalk Server」が「SharePoint Server」と「SAP ERP」を連携させる。OBAを活用した業務システムはすでに稼動しており、Excelをフロントエンドにした受発注システム、「Excel/SharePoint Server」を使用した分析ダッシュボード、「Infopath」「SharePoint Server」を中心としたソフト開発支援システム、「Infopath」をフロントエンドとした医療情報連携システムなどの事例があるという。
マイクロソフト インフォメーションワーカービジネス本部 エグゼクティブプロダクトマネージャ 西岡真樹氏 |
同社インフォメーションワーカービジネス本部 エグゼクティブプロダクトマネージャ 西岡真樹氏は「OBAは、人とシステムの潜在能力を発揮させる。システムとシステムとをつなぎ、基幹システムのデータをビジネスの現場で活用できるようにして、SharePoint Serverを中核に、定型、非定型の業務プロセスを融合させることができる。操作は、使いやすいユーザインタフェースで、日常の環境を利用できる。Officeはクライアントソフト機能だけのものではないことに注目してほしい」と話す。