米PricewaterhouseCoopers(PwC)は、世界各国の企業の最高経営責任者(CEO)を対象にした最新調査レポート「11th Annual Global CEO Survey」の発表を行った。景気後退への懸念が、新興諸国を除く大半の地域のCEOの間で、如実に示されている。
世界50カ国、1,150名のCEOへのアンケート調査に基づく同レポートは、スイスのダボスで開催される世界経済フォーラム(WEF: World Economic Forum)の年次総会を前に、正式リリースされた。調査結果によれば、今後1年間の事業にマイナスの影響を及ぼし得る最大の要因に、景気後退への懸念が挙げられた。規制強化に伴う事業失速、テロリズムや新種の流行病蔓延への不安、エネルギー資源の不足、地球温暖化を始めとする環境問題などの各要因を抑え、失速する経済事情がビジネスに与える打撃が、同調査で最大の懸案事項となったのは、過去11年間で初めてになるという。
「今後1年間に好調な業績を見込めると確信している」との回答は、北米地域のCEOの35%、西欧地域のCEOの44%にとどまり、いずれも昨年の調査から大幅にダウンした。2003年の調査以降は、毎年のように好業績を期待するCEOが増加していただけに、今回の調査は大きな転換点を示しているようだ。しかしながら、中国企業のCEOの73%、インド企業のCEOの90%が「今後の好業績を確信している」と回答したとされ、南米、中東欧、アジア太平洋地域においては、楽観的な見解のCEOが過半数を超えたという。
PwC CEOのSamuel A. DiPiazza氏 |
PwC CEOのSamuel A. DiPiazza氏は「米国や西欧など、先進経済諸国のCEOは、現在の景気低迷が深刻な不況へと変わることへの懸念に悩まされている。それとは対照的に、新興経済諸国のCEOは、過去にない勢いで事業拡大を経験しており、今後の見通しも非常に良いものが多い」とコメントした。
なお、今後1年間に急速な事業拡大を望むCEOは多くないものの、何らかのM&A(企業の合併/買収)を検討しているとの回答者が3割を超えたようだ。これまでの国際的なM&Aは、主に西欧企業が牽引する形で進んでいたものの、今回の調査の最大の特徴は、アジア太平洋地域の企業のCEOが、最もM&Aに積極的になってきている点にあるという。同じアジア地域の企業に対し、M&A戦略を加速させていきたいとの回答が目立っているようだ。