Scott Guthrie氏 - General Manager, Microsoft Corporation

マイクロソフトは21日、開発ツールVisual Studioの最新版となる「Visual Studio 2008」の提供開始にあたって、開発者向けのイベント「Visual Studio 2008 Ready Day」を東京にて開催した。同イベントでは、まずキーノートセッションに米MicrosoftのScott Guthrie(スコット・ガスリー)氏が登壇し、Visual Studio 2008登場の意義について説明した。Guthrie氏は同社で.NET Framework開発部門のGeneral Managerを務め、CLR (Common Language Runtime)/.NET Base Class LibraryのコアやASP.NET、Silverlight、WPF (Windows Presentation Foundation)、IIS 7.0などの開発チームを統括している。

同氏はまず、開発の対象となるアプリケーションの分野をWeb、デスクトップ、そしてメディア/RIAの3つに大きく分類し、.NETがその3分野を広くカバーしている点を強調した。その上で、今後はすべての分野に渡って共通のプラットフォームを提供することが大きな価値となると指摘する。そしてマイクロソフトの目指すゴールは、3つのユーザーエクスペリエンスを統合した最高の開発ツールを提供することにあると語った。

続いて、そのゴールに向けて今回リリースするVisual Studio 2008および.NET Framework 3.5の持つ価値を、デモを交えながら紹介した。

まず第一に取り上げられたのがVisual Studio 2008におけるマルチターゲットのサポートである。従来のVisual Studioは、各バージョンごとにサポートする.NET Frameworkのバージョンが決まっていた。2008では最新の.NET Framework 3.5だけでなく、2.0や3.0といったバージョンもサポートしており、アプリケーションを開く際や作成する際に使用するバージョンを指定することができるという。そして開発画面には、選択したバージョンで有効な機能のみが表示される。これによって現行で使用している.NETのバージョンを気にすることなく、最新のVisual Studioに移行することができる。

次に挙げられたのがASP.NET 3.5だ。Visual Studio 2008ではASP.NET AJAXが統合されていることに加え、JavaScriptに対するIntellisense機能やJavaScriptデバッガなど、多くのAjaxサポート機能が用意されている。とくにIntellisense機能は強力で、これによって開発者はコーディングに必要な情報を的確に知ることができる。その他、CSS/HTMLデザイナやLINQ (Language Integrated Query: 統合言語クエリ) およびデータ操作機能も大幅に強化されている。

Ajaxサポート - JavaScriptに対するIntellisense機能

CSS/HTMLサポート - Split ViewやCSSのマネージドスタイルで生産性をアップ

LINQサポート - ビルトインのORMによるデータクラスの定義

LINQサポート - クエリの作成にもIntellisense機能

LINQサポート - デバッガも統合されている

クライアント開発については、Office開発機能やWindowsフォームの優位性を強調する。従来、Office開発機能についてはVisual Studio Tools for OfficeとしてVisual Studio本体とは別に提供されていたが、2008ではこれが統合され、標準で利用できるようになった。ここにはリボン拡張やOutlookリージョンサポートなどが含まれる。WindowsフォームではASP.NETと同様のLINQやデータ操作機能が利用できる他、WPFとの統合も可能となっている。その他、WPF WYSIWYGデザイナや改良されたClickOnceによってさらに高い生産性を実現しているとのことだ。

一方でエンタープライズ開発に対しては、テスト機能やTFS (Team Foundation Server) の改良が大きなポイントだという。また、ワークフローデザイナによるプロセスのモデル化や、WCFツールによるWebサービス統合の機能なども見逃せない。

上記のような各分野における新機能に加え、Guthrie氏はもうひとつの大きなトピックとして.NET Frameworkライブラリのソースコード公開を挙げている。公開されているソースコードには.NETのベースクラスライブラリやASP.NET、WPF、WCF、WF (Windows Workflow Foundation)、LINQライブラリなどが含まれており、開発者は必要に応じてこれらのソースコードを参照することができる。さらに、Visual Studio 2008のデバッグ機能からはソースサーバー上にあるソースコードを参照することもできるようになっているという。

公開ソースコードの参照 - デバッガがソースサーバー上に公開されたソースを参照している

Guthrie氏は「2008年は.NETデベロッパにとって非常にエキサイティングな年になるだろう」と語っている。まず今回Visual Studio 2008および.NET Framework 3.5がリリースされ、年内にはSilverlightのリリースも予定されている。「非常に大きな変革が起きる年になるだろうが、.NET Frameworkをひとつ知っておけばあらゆる分野のアプリケーションを構築できるということでもある。このことはみなさんのビジネスを豊かにするだろう」(Guthrie氏)