サーバーの機能をユーザー側に貸与し、運営から管理、保守までを請け負うホスティングの市場が注目されている。企業向けの情報システム領域に占めるインターネットの比重がさらに大きくなるとともに、ブロードバンド化がいっそう進展するなか、このサービスの市場規模は拡大を続けており、今後もいっそう伸長することが見込まれるという。この市場の最新動向、成長の原動力、2008年以降の展望などについて、GMOホスティング&セキュリティの青山満社長に聞いた。

GMOホスティング&セキュリティ代表取締役社長 青山満氏


海外に遅れをとる日本企業のJPドメイン数


――国内市場の見通しは

国内のホスティング事業の市場規模は、2007年でおよそ800億円と見込まれているが、この領域の成長性は非常に高く、年率18~19%で拡大しており、2010年には1,500億円程度にまでなるとみられている(IDCの調査による)。この市場の潜在力が大きいことは、インターネットの登録ドメイン数がひとつの可能性を示している。国内のWebサイトには「.com」や「.net」も少なくないが、国別コードでみると、「.jp」は未だ100万件ほどしかない。日本では、インターネットの立ち上がりが遅れていたという背景もあるが、この数字は、ドイツの「.de」が1,000万件、英国の「.uk」が500万件であるのに対し、かなり少ない。つまり、まだ掘り起こせる余地が大きいということになる。

――「.jp」はなぜ少ないのか

経営者層が高齢で、ITリテラシーがあまり高くない企業が少なくなかった。売上高が100億円規模で、技術力の高い製造業であっても、自社のWebサイトをもっていなくて、自前のメールドメインさえない、LANが外部にはつながっていない、というような例もあった。IT投資に理解が乏しく、単にコスト削減や、新しいパソコンを導入して工数を減らすといった点にしか関心がない、というような企業もある。「.jp」は100万件のうち、法人、個人が大体半々であり、「.jp」のサイトは50万社程度にしか使用されていないことになる。

セキュリティへの意識変化でホスティング需要高まる


――ホスティングはなぜ成長を続けているのか

自社にIT部門があり、自前でシステム構築をしてきた企業でも、ホスティングを利用するようになってきた。これは、各企業が、セキュリティ対策の強化を推進していることに起因するところが大きい。外部からのさまざまな攻撃、危険に対して、自社の力だけで完全に対応するには限界があるからであり、これらの企業がホスティングを活用することとなった大きな理由だ。

――ホスティングに対する企業の意識は変わっているのか

経営者層の意識も変わってきた。2007年には、06年、05年に比べ、ホスティングに対する信頼性が高くなってきたようだ。当社の顧客も、これまではホスティングを利用していなかった、規模の大きな企業が非常に増えてきている。金融業からの需要は従来ほとんどなかった。また、共用サーバーへの需要にはそれほど変化はないが、専用サーバーへの需要は伸びている。

――セキュリティ強化の潮流はどんな影響を与えたか

企業のセキュリティに対する認識はたいへん高まっている。当社では、ホスティングとともにセキュリティ事業も行っているが、サーバーの信頼性を確保する電子証明書の発行サービスは重要性が増している。証明書の導入率はこれまでは数%程度だったが、最近では新規の約25%は導入するようになっている。ホスティングでは、一件当たりの単価も上がり、高価格のサービスが伸長している。これもセキュリティ面への配慮が理由だ。サーバーがクラッキングの標的になったり、スパムの踏み台にされたり、フィッシング詐欺も増加するなど、サーバーをとりまく危険は増える一方であり、ホスティングを用いることにより、これらの危機からサーバーを守ることができる。