NECと米EMCは、価格を100万円未満に抑えた、中堅/中小企業向けのエントリ級データストレージ装置を共同開発、それぞれのブランドで発売すると発表した。両者が共同で設計/開発し、生産はNECが担当した。NECは「iStorage E1」、EMCは「CLARiiON/CLARiX AX4」として世界的に販売、日本市場では3年後をめどに、両社あわせて30%のシェア獲得を目指す。両社は2006年4月に戦略的提携関係を構築しており、今回の新製品はこれに基づくものだ。

EMC「CLARiX AX4」

NEC「iStorage E1」

NECとEMCの協力で、国内シェア30%を目指す

NECは今回の協業により、自社のストレージ製品「iStorage」の品揃えを拡充するとともに、共同開発、生産台数増加によるコストダウンを図り、海外での事業拡大をいっそう進展させる意向だ。EMCは、世界市場で中堅/中小企業向けストレージのシェア拡大を目指す。

新製品は、ホストとの接続インタフェースに、従来の主流であるファイバチャネルだけでなく、iSCSI(Internet Small Computer System Interface)を採用しており、既存のEthernetを使用でき、低価格なEthernet機器を介してサーバとストレージの接続が可能となり、外付け型ストレージの導入コストの削減とIPネットワークによる容易な運用を実現、企業はそれぞれの環境に適したネットワークを選択できる。iSCSIはコストパフォーマンスが良く、運用性も高いことから今後、国内外で急速に立ち上がることが予想されており、両社は新製品の拡販を通じて、iSCSIのソリューションの普及を図る。

また、この製品が照準をあわせているのは中堅/中小企業であるため、操作性の向上に力点を置いていることも大きな特徴だ。「中小企業では、ストレージを専門に運用する要員を待つのは困難」(NEC)であるため、インストールはウィザードを用いて容易に実行できるとともに、ストレージの設定、状態監視を行う専用の管理ソフトウェアも備え、操作自体も、Webベースで簡単にできるという。

最大ドライブ搭載数は60ディスクドライブで、最大64ホストへの接続が可能だ。信頼性の高いSASドライブと、ギガバイト単位のコストが低いSATA(シリアルATA)ドライブを混在せることができ、データの重要度やアクセス頻度など、多様な要件に応じた最適な構成ができる。両社は「内部統制などによる文書や画像など非構造データの増加が見込まれる分野に適した製品」としている。記憶容量は45TBまで拡張が可能だ。さらに、RAIDコントローラ、電源など主要コンポーネントの二重化により、可用性を高めている。対応OSは、Windows Server 2003、Linux、UNIX、VMware。

NEC執行役員常務の丸山好一氏は「ストレージの分野では、ハイエンドが少しずつ規模を縮小させている一方、ローエンドおよびエントリは国内、海外とも年率10%以上での成長が期待できる非常に魅力ある市場だ」と指摘、今回の施策は「データ量が増大している、中堅/中小企業のシステムに向け、スケーラブルかつシンプルな低価格ストレージを製品化した、という位置づけだ」と話す。

米EMC主席副社長 グローバル・サービス兼リソース管理ソフトウェア・グループ プレジデントのハワード・エライアス氏は「日本でNECとの緊密な連携ができたことを喜ばしく思う。両者は、情報の管理、保存の技術について、共通のビジョンをもっている。この協業で、大手だけでなく、中堅/中小向け市場でも事業を拡大していくことができる。今後数年で、両者合計で国内シェアNo.1になりたい」と述べている。

NEC執行役員常務の丸山好一氏

米EMC主席副社長 グローバル・サービス兼リソース管理ソフトウェア・グループ プレジデント ハワード・エライアス氏

販売体制の点では、NECはIAサーバの「Express5800」の販路を活用する。丸山常務は「Express5800は、11年連続でPCサーバのトップシェアを獲得しており、(大手だけでなく)中堅/中小企業でも愛用されている。今回の製品は、まず、Express5800のストレージとして活用される」とみている。EMCは、パートナー販売支援プログラム「Velocityプログラム」を用いる方針だ。「同プログラム」は、リセラー、システムインテグレータを含め、EMC製品を取り扱うソリューションプロバイダ向けの支援策で、現在16社がパートナー契約しており「さらにパートナーを拡大する」(EMCジャパン 諸星俊男社長)意向だ。

両社の提携による協業は「順調に進んで」(丸山常務)おり、2007年4月にはコンテンツ管理ソリューションの共同開発の成果として、NECの情報管理ブランド「InfoFrame Document」で、新規ソリューションが開発されているほか、6月にはミドルウェア製品の共同開発、相互供給への着手が発表されている。今回はいよいよハードでの協業に入るわけだが、今後、ハイエンド向けでの開発で協業については「さまざまな議論のなかで、新しい協業ができる可能性はある」(同)とするにとどめている。