映画や放送コンテンツ、音楽などの二次利用を促進しようと2007年6月にオープンしたWebサイト「ジャパン・コンテンツ・ショーケース(JapaCON)」。作品名などを入力、検索すれば、各コンテンツの作品情報やコンテンツホルダ(権利者)の連絡先が分かるようになっており、今後の普及拡大が期待される。同サイトの運営を受託している映像産業振興機構の事業部事業室 チーフプロデューサー・末永昌樹氏にインタビューした。
コンテンツの二次利用促進へ、日本経団連が企画
――「ジャパン・コンテンツ・ショーケース」設立の経緯と目的について教えてください。
日本経済団体連合会(日本経団連)の「コンテンツ流通促進分科会」が企画した、コンテンツ関連企業や業界団体の組織「コンテンツ・ポータルサイト運営協議会」が2006年8月に設立され、当時日本レコード協会の会長(現顧問)だった佐藤修氏が、同協議会の会長となりました。その後、毎月運営会議を開くなどの準備を経て、2007年6月にコンテンツ・ポータルサイトのJapaCONがオープンしました。
JapaCON開設の目的ですが、一言で言えば、日本のコンテンツの二次利用を促進し、海外にもどんどん出していくことを目指しています。コンテンツを二次利用したいが、どこに連絡していいか分からないといった場合も多く、検索すればすぐに連絡先が分かるようなサイトを作りたいということからスタートしました。
――JapaCONで検索できるコンテンツは、どのようなものがあるのでしょうか。
カテゴリーとしては以下のようなものがあります。
- 映画
- 映像番組
- 音楽
- 文芸作品
- コミック
- アニメ
- 写真・美術・イラスト
- ゲーム
こうしたカテゴリーに属するコンテンツの作品名などを入力して検索すれば、製作年月日やタイトル、テレビ番組であれば出演者、音楽であれば歌手などの実演家などの情報が分かるようになっています。これだけの多様なコンテンツ・カテゴリーを横断的に検索できるポータルサイトは世界でもほとんどありません。
また、作品情報以外のコンテンツ保有者の連絡先などについては、利用者登録をしてIDを持てばアクセスできるようになっています。利用者登録できる条件としては、(1)過去にコンテンツを取り扱ったことのある法人で、(2)コンテンツ・ポータルサイト運営協議会の承認を得る、ことが必要になっています。
――逆に、コンテンツを登録したい場合はどうすればいいのでしょうか?
コンテンツを登録するには、まず同協議会の会員になっていただく必要があります。会員になるには、一口10万円の会費を事業規模に応じた口数で払っていただいています。登録した事業者は、JapaCONのメタデータに、作品名やサブタイトル、シリーズ名、スタッフ、キャスト、マーケティング項目などのテキストデータを登録してもらいます。利用者は、こうした情報に基づいて、作品情報にアクセスできるようになっているのです。
放送コンテンツや単館系映画の登録促進が課題
――コンテンツの登録状況はどのようになっているのでしょうか?
2007年11月末現在で、映画が55本、放送コンテンツなどの映像番組が1,499本、音楽が224万曲、文芸作品が72万冊、コミックが5万8,000タイトル、アニメが13作品、写真・美術・イラストが1,378作品登録されています。
ジャパン ミュージック データが持つレコード協会加盟各社の作品情報のデータを登録している音楽に関する作品情報は豊富ですが、情報のデータ化が進んでいない放送コンテンツなどの映像番組の登録はまだまだ少ないというのが現状です。
また、映画は日本映画制作者連盟加盟の大手4社の作品が登録されていますが、大手映画会社の作品は、海外の売り先まで決まっているといった場合も多く、むしろ、単館系の映画などあまり日の当たらないような状況にある映画業者などに登録をしてもらえば、JapaCONを有効に活用してもらえると考えています。こうした事情は映画に限らず、今後は他のカテゴリーでも、より多くの中小コンテンツホルダに入会してもらえるように努力していきたいと思っています。
韓国のコンテンツ・ポータルサイトは大きな成果
――JapaCONへのアクセス状況はいかがでしょうか?
1日の平均ページビュー(PV)は750と、まだそう多くはありません。やはり、JapaCONの認知度がまだ高くないのが原因だと思われます。より一層の周知を図るために、当サイトのマスコットキャラクターと愛称を公募し、マスコットキャラクターは「こんてんちゅ~」、愛称「JapaCON(ジャパコン)」が今年10月に決まりました。「こんてんちゅ~」は、11月半ばから当サイトに登場しています。
会員となったコンテンツホルダのサイトとの相互リンクを増やしていったり、トップページのトピックなどの更新をできるだけ行うようにしたりすることで、アクセス数アップを図っていきたいと考えています。
――JapaCONを通じてビジネスが成立した事例は今まであるのでしょうか?
JapaCONは基本的に情報を提供するだけなので、利用者と登録者の間で交渉が成立したといったような情報はまだ把握していません。ですが、今後登録者、利用者双方の数が増えていくことで、そうした事例が耳に入ってくるケースもあると思います。
海外では、韓国の「韓国文化コンテンツ振興院(KOCCA)」が運営するコンテンツ・ポータルサイトは、JapaCONと同様、アニメ、コミック、音楽、映画、放送番組などの情報を横断的に網羅しており、かなりの成果をあげていると聞いています。
JapaCONは、やっている当事者から見ても、日本のコンテンツ産業振興に大きく貢献できる素晴らしい試みだと思っています。現在はまだ満足できる状況とは言えませんが、映画、アニメ、映像番組などを中心に、データの充実を図っていきたいと考えています。