Charles Giancarlo氏

米Ciscoは20日(現地時間)、同社エグゼクティブバイスプレジデントで最高開発責任者(Chief Development Officer)のCharles Giancarlo氏が辞任する人事を発表した。同氏はCiscoを離れ、新たな可能性を模索する予定だという。Giancarlo氏はCisco在籍14年のベテランで、過去10年あまりのCiscoの快進撃を技術面から支えた中心人物。特にM&Aによる新技術獲得や新分野の開拓を手がけ、現在同社の主力製品のひとつであるEthernetスイッチのCatalystシリーズの原型となったKalpana買収を同社参加直後の1994年に手がけている。またCisco会長兼CEOのJohn Chambers氏の後継者の1人とも目されており、実質的に同社ナンバー2の人物だったといえる。

Giancarlo氏は長らく空席だったCiscoの最高技術責任者(CTO)の座に2004年に就任、翌2005年にはCDOへと昇格している。拡大路線とスピード経営を標榜するCiscoにとって、M&Aによる技術買収は欠かせないものだ。自社の研究開発と合わせ、こうした技術獲得における選択や戦略立案を支えていたのが同氏だ。今年12月初旬には社内の開発部門にDevelopment Councilと呼ばれる組織体制を整え、鍵となる7つの分野にそれぞれリーダーを配置、Giancarlo氏の下で研究開発を進めていくとメディアやアナリスト関係者らにお披露目式を行ったばかりだった。Ciscoによれば、今後Development CouncilはChambers氏の直下に属し、直接レポートを行う形式になるという。なお、12月4日にCTOとしてCiscoに参加した元MotorolaのPadmasree Warrior氏はDevelopment Councilとは連携せず、Chambers氏の直下で今後の方針を模索していく予定だ。

Chambers氏は「CharlieはCisco在籍の14年間、近しい同僚であり、よき友人だった。また会社に対しても数多くの目覚しい功績を残してくれた。Ciscoを離れてもそのファミリーの一員だと思っている」と同氏の存在を惜しむコメントを残している。

一方でCiscoには、今後の後継者選びが1つの課題としてのしかかってきたといえる。1990年代にインターネットブームとともに急成長を続け、数々の企業買収と業界シェア拡大でネットワーク業界の巨人となった同社は、今年10月にGoogleに抜かれるまでシリコンバレー企業でトップの時価総額を誇っていた。1995年にCiscoに参加したChambers氏がCEOとして同社の拡大戦略を推し進めてきた成果だ。だが一方で同氏はすでに58歳と第一線から退く時期が見えつつある。技術リーダーでもある50歳のGiancarlo氏は、その適任の1人だっただろう。

だがこうした後継問題がGiancarlo氏のCisco離籍の一因になったという見方もある。経済紙の米Wall Street Journalは同氏のコメントとして、Chambers氏に後継者指名されたことが辞職のきっかけの1つで、半年間にわたって社内で協議を進めてきたことを紹介している。Giancarlo氏はあくまで技術志向であり、営業などの別の責務が要求されるCEO職は相容れないとの見解だ。また同紙は、Giancarlo氏がIT系の投資会社Silver Lakeに来年1月1日以降、ディレクターとして参加する予定だと報じている。

次期CEOを目されてCiscoを去った人物はGiancarlo氏で2人目となる。1人目はルータビジネスの責任者だったMike Volpi氏で、Giancarlo氏と同様に13年のCisco在籍経験があり、一時期は日本法人のビジネス立ち上げに携わっていたこともある人物だ。Volpi氏は今年6月、Skype創業者が立ち上げたインターネットTV企業JoostのCEOに就任している。