Appleファンサイトの1つ「Think Secret」の閉鎖が話題になっている。Think Secretの12月20日(米国時間)の発表によると、米Appleから起こされた訴訟で和解し、その条件の1つとしてサイトを閉鎖するという。Think Secretは個人ベースで運営されるAppleファンサイトとしては老舗で、Appleやその新製品に関する噂やニュースなどを配信し続けてきた。だが2005年1月に米AppleがThink Secretに掲載された情報に同社の機密事項が含まれるとして、同サイトの運営者らを提訴。Think Secret側もAppleの訴えが無効であるとして訴訟取り下げの訴えを起こしたが、水面下での交渉も続いていた。
Think Secretに対する訴訟でAppleは「サイトに掲載された情報には機密情報が含まれており、当社の機密契約に違反する形で何者かが漏えいした結果だ」としていた。これはThink Secretの情報の信憑性を裏付けるのと同時に、Appleの訴訟が情報漏えい源の特定に主眼を置いていたことの表れでもあった。Appleは、その前年の2004年12月にもAppleInsiderとPowerPageという2つのファンサイトに対して、Think Secretと同様の訴訟を起こしていた。これらの訴訟で議論となったのが、ファンサイトにも情報源の秘匿の原則が適用されるかという点だ。電子フロンティア財団(EFF)が「ジャーナリストとして情報源の匿名性を守るべき」と主張してサイト運営者側の支援に乗り出すなど、個人ジャーナリストの扱いに関する論争が広がった。
Think Secret側の訴えの後、2005年5月にこの裁判はいったん保留となり、水面下での交渉を経て今回の和解に至った。Think Secretは最後まで情報源をApple側に公開することはなく、その代わりにサイトを閉鎖することで「両者にとってメリットのある方法」として解決となった。EFFはこの発表を受け「Think Secretの閉鎖は残念だが、Appleは今回の件から教訓を得て、今後自身のファンに対して訴訟を起こすことのないように望んでいる」とのコメントを出している。
ブログメディアの発達により、従来型メディアと一般ユーザーとの垣根は取り払われつつある。簡単にサイトを立ち上げ、自身の持つ経験や情報ソースを活かした記事を掲載できる。人々の"知りたい"という欲求がこれらサイトの存在を支えている。だがブログやこうしたサイトがメディアの1つとして認知される一方で、Think Secretのように訴訟の脅威に直面するケースも出てくる。その意味で、今回の裁判は個人ジャーナリスト対企業のテストケースとも呼べるものだ。「最後まで情報源を守り抜いたThink Secretが闘争の勝者」とたたえる意見もネット上ではみられる。
気になるのはThink Secret運営者Nick Ciarelli氏の今後だ。同氏はAppleとの訴訟がスタートした2005年1月に、自身が米ハーバード大学在学の19歳の学生であることを自ら編集人を務めるHarvard Crimson紙で明らかにした。同氏によれば、Think Secretをスタートしたのは13歳の中学生のとき。その後もニューヨーク州内の学校に通いながらサイトを運営、ハーバード大に入学し現在に至るまで10年近くサイトの運営を続けてきたことになる。Think Secret閉鎖発表の声明の中で同氏は「"友好的な"和解に達したことを嬉しく思う。私自身はこれで大学生活に戻り、より広い意味でのジャーナリストとしての活動にまい進できるだろう」とコメントしている。これまでのキャリアを活かしつつ、今後の活動についていろいろ思索を巡らせているようだ。