SAPジャパンは、顧客管理アプリケーション製品の最新版「SAP Customer Relationship Management 2007 (SAP CRM 2007)」を14日から発売する。同社の基幹プラットフォーム「SAP NetWeaver」で稼動し、エンタープライズSOA(Service Oriented Architecture)に対応、Webサービス化を進展させているとともに、他システムとの連携もしやすくしている。また、操作性向上を特に重点化したほか、エンドユーザーがカスタマイズできる部分を大きくしていることや、最適化機能、業種別ソリューションへの対応などを大きな特徴としている。同社は新製品を軸に、国内CRM市場での「手作り」の部分やサービスで構成される領域での浸透をさらに加速したい考えだ。
「SAP CRM 2007」は、ユーザーインタフェースの改善に注力しており、なかでも、エンドユーザーがさらに使い勝手をよくできるよう、パーソナライズ化に力点を置いた。一画面に示される画面ブロック、その内部に表示される項目などを変更させることが可能で、簡単なドラッグ&ドロップにより項目の順序などの構成を変えることができる。また、検索機能を強化、条件の柔軟な組み合わせで複合検索ができるようにしている。
さらに「SAP NetWeaver Visual Compser」と呼ばれる、コーディングやデータベースについての詳しい知識を必要としない開発ツールを用意しており、インタフェースに対してのエンドユーザーの自由度を高めている。業務プロセスとの連携機能を強化したほか、多様な機能をサービスとして取り込むことができ、複数のシステムの情報を組み合わせた画面を形成することが可能だ。
エンドユーザーが普段使い慣れた環境との違和感を感じさせないようにする工夫も盛り込まれた。アドビシステムズと共同開発した「SAP Interactive Forms by Adobe」は、既存のPDFの作業実績報告書をそのまま入力画面にできる。オフラインでデータを入力/保存し、現場でそのまま印刷できるほか、後で「SAP CRM」に送信されたPDFはサービスレポート情報としてそのまま更新される。
「Microsoft Office Outlook」との協調も特徴のひとつだ。マイクロソフトと共同開発した「Duet for Microsoft Office and SAP」との連携により、「Microsoft Office Outlook」をSAP CRMの画面として活用することができ、顧客からのメールを効率的に活用することが可能になる。
SAPジャパン ソリューション本部 CRM担当部長 桃木継之助氏 |
SAPジャパン バイスプレジデント CRM事業開発 岡村崇氏 |
同社ソリューション本部 CRM担当部長 桃木継之助氏は「これまでは、SAPが提供する画面が中心となっていたが、今後は、エンドユーザーがそれぞれ必要に応じた画面を開発しやすくなる。使いやすさの点では、『My Yahoo!』や、『iGoogle』と同様の水準にまで達していると考えている」と話す。
一方、「SAP CRM 2007」では、業種別機能の拡張も大きな強化点だ。なかでも、販売促進費が多用される消費財/耐久消費財業界向けの販売促進費管理機能は、各店舗で異なる手数料、人件費やPOP広告などの販促費などを効率的に管理し、各小売店の重要度、販促費の効果など、個別店舗分析が可能になり、戦略的販売促進計画の立案など、これらの業界の積極的な展開を支援する。
最適化機能の強化としては、コールセンター向け顧客対応最適化機能がある。重要な情報を動的に画面にプッシュ表示することにより、担当オペレーターを適切な行動に誘導する。たとえば、顧客情報と離反モデルの組み合わせにより、離反しそうな顧客を察知、警告する。オペレーターは表示されるコミュニケーションマニュアルを参考に顧客の不満や他社の情報を聞くなど、離反防止のための対策を実行できる
今回の製品は、同社のCRMとしては2年ぶりの改版となり「大きな開発投資の成果であり、エンタープライズSOAを実現する、初めてのCRMソリューション」(桃木氏)と位置づけられるている。エンタープライズSOAは、サービスベースのビジネスソリューションを開発するための同社の基本概念で、「SAP NetWeaver」を技術基盤として、アプリケーションをWebサービスとして供給する。
2006年度の国内CRM市場規模は、ソフト開発、サービス、ハードなどを含めておよそ4,400億円(IDCによる調査)、そのうち2,500億円はサービスの領域になる。市場全体は今年度は前年比5 - 10%増と見込まれている。同社のバイスプレジデント CRM事業開発 岡村崇氏は「日本市場でのSAPのCRMはシェア19.5%(IDCによる調査)でトップだが、今後、さらに他社の市場への浸透に加え、『手作り』のCRM市場へ、SOAの強みを活かして参入していきたい」と語る。