米Microsoftは4日(現地時間)、間もなくリリースが予定されるWindows Vista SP1ならびにWindows Server 2008において、OSライセンスの不正利用を行うクラッキングの対策強化を発表した。同社によれば、現在市場で主流のクラッキング手法の2つを完全に封じ、クラック版Windowsを使い続けるユーザーには何度も警告を促す。ここが非アクティベーション時に機能制限がかかる従来バージョンとの大きな違いだ。
Microsoftによれば、Windows Vistaでは不正対策を強化したことでWindows XP時代の半分以下に海賊行為を押さえ込むことに成功したというが、それでもなおクラック行為は洗練され続け、市場にはクラック版Windowsやツールが出回っているという。現在市場で主流のクラック手法には「OEM BIOS Exploit」「Grace Timer Exploit」の主に2つがあり、システムを偽装することでアクティベーションを回避していると説明する。OEM BIOS ExploitはシステムファイルとマザーボードのBIOSを書き換えることで、プリインストールで出荷されるOEM版Windows PCと同じ状態を作り出し、アクティベーションを回避する偽装テクニックだ。
もう一方のGrace Timer(猶予時間タイマー) Exploitは、たとえばアクティベーションの猶予期間を2099年などの通常ではあり得ない数値に設定し、アクティベーションを回避する方法となる。Microsoftが2008年第1四半期にリリースする2つのOSメジャーアップデートでターゲットとするのはこの2つの偽装テクニックで、これを無効化するのが目的だという。
機能制限モードの廃止
クラック対策を強化する一方で、ユーザー側には利用面での配慮も行っている。2006年11月にRTM版の企業向け提供が開始されたオリジナルのVistaで導入されていた非アクティベーション時に機能制限がかかる「Reduced Functionality Mode」は、今回のSP1では搭載が見送られている。Microsoftではユーザーやパートナーからのフィードバックを受けての変更だと述べており、あくまでWGAによる正規のアクティベーションを促し、そのための方法を説明するだけにとどめる方針だ。
今回の措置について米Microsoft Windows製品マーケティング部門バイスプレジデントのMike Sievert氏は「われわれの努力の結果で状況が進展する一方で、海賊行為は依然として業界の大きな問題だ。BSA(Business Software Alliance)の試算によれば、世界で不正利用されているソフトウェアの割合は35%で、特定地域に至っては80%にも達するという。Microsoftは昨年、海賊版Microsoft製品を扱う1,000以上の事業者に対して法的手段に訴え、ネット上での不正ソフトのオークション取引を5万件以上取り下げさせた。また今四半期は海賊行為が減ったことを受け、WindowsのOEMライセンス売上が5%伸びている。われわれの目標は業界の損失を減らし、正規ユーザーと非正規ユーザーをきちんと区別して扱うことだ。クラック行為はシステムの主要コンポーネントに悪影響を与え、システム全体の安定性を揺るがすことにもつながる」とコメントしている。