米Netezzaの日本法人である日本ネティ-ザは、国内での事業を強化する方針を明らかにした。同社は、データウェアハウスに最適化したサーバ製品「Netezza Performance Server(NPS)」を展開している。米Neteezaは欧米などで、製造業、流通分野を中心に実績をあげている。今回同社は、大規模DWHシステム向けパフォーマンス検証センターの機能を増強、本格稼働する。同検証センターはNPSの導入を検討する企業が、実際の事業で使用するデータを用い、無償で評価/検証ができる。各企業は、製品の効果を検証したうえで導入の可否を決めることができる。
データウェアハウス(DWH)は、企業内で日常的に蓄積された膨大な業務データを分析、さまざまな要素の関係性などを抽出、企業の意思決定の支援に活用するシステムだが、同社のダグラス・エッツェル社長は「最近、いくつかの要因が重なり、課題が出てきている」と話す。第一に"情報爆発"と称せられるほど企業が扱うデータ量が過剰なまでに拡大していること。また、分析自体が複雑化するとともに、DWHに求められる要件が厳しくなっている。「汎用的なサーバでは、対応しづらくなってきている。分析範囲を制限したり、事前の設計作業、チューニングなどを要するなど、コスト高になってしまう」(エッツェル社長)ことから、DWHはあまり活用されていないという。
同社は、これらのような状況に対する解答のひとつとして「NPS」を提示している。「NPS」システムは、リレーショナルデータベース、サーバ、ストレージを統合した製品で、エッツェル社長は「従来の汎用的なサーバとはまったくアーキテクチャが異なり、ハード/ソフトを完全に統合、データベースソフトも自社開発しており、既存のDWHに比べ、10 - 100倍のパフォーマンスを実現している」と語る。NPSはこれまでに、全世界で127社に納入している
一般に汎用的なサーバの場合、HDDなどに蓄積されたデータをメモリ上に展開してから処理する。また、CPUの処理性能に大きく依存するわけだが、データ量が巨大化すると「メモリに転送するだけで時間がかかる。これまでのシステムでは、データの流れがボトルネックになっていた」(同社技術本部 法華津誠本部長)ため、NPSでは「データがメモリに到達する前に処理するストリーミング処理」(同)を採用していることが大きな特徴だ。
NPSは基本的に、管理などを担うフロントエンドのホストと、処理作業を受け持つ複数のSPU(Snippet Processing Unit)から構成される。ホストには汎用的なIAサーバである日本ヒューレット・パッカードの「HP ProLiant DL585」を用い、OSはLinuxが稼動する。作業はSPUが並列処理するという、非対称型超並列処理技術を採用している。
SPUは、CPU、メモリ、HDDなどからなるノードだが、NPSのアーキテクチャの鍵となるのは、FPGA(Field Programming Gate Array)と呼ばれるゲートを使用していることだろう。FPGAは、プログラミングが可能なLSIで、一定のルールを設定でき「SQLで必要最小限のデータだけを取り込み、CPU内では、大幅にデータ量が削減される」(同)ことが「既存のシステムの10-100倍のパフォーマンス」を達成している理由だ。同社によれば、1SPUあたりのスキャン能力は、毎秒60-70MBになる。NPS製品には、SPU数が56-896で、1ラックあたり最大12.5TBまでのユーザデータ容量に対応できるNPS10000シリーズと、SPU数が28、3TBまでに対応できる、エントリレベルのNPS5000シリーズが用意されている。
さらに「SPUは速いだけではない」と法華津本部長は指摘する。テーブルサイズの設計、インデックス管理、RAID構成の判断、ファイルシステムの定義--など、これまでの、データベースで必要とされる設計、管理は必要ないという。また、SPUのCPUには、インテル、AMD製品ではなく、Power PCを採用していることも注目される。法華津本部長は「Power PCは、画像処理に強く、高性能で消費電力も低い。FPGAは、プラズマディスプレイテレビやDVDプレーヤーなどで使われているため、需要が拡大しており、技術的にも進歩を続けている」と述べている。
日本ネティ-ザ ダグラス・エッツェル社長 |
日本ネティ-ザ 技術本部 法華津誠(ほけつ まこと)本部長 |
同社は、大規模DWHシステム向けパフォーマンス検証センター「Netezza Performance Laboratory」を、東京・三鷹市にあるデータセンター内に開設しており、NPS 5000/10000シリーズが常設され、最大25TBのユーザデータを処理できる並列データベースを、システム導入検討中の企業が利用できる。今回、サーバを1台から4台に増やし「公開できる検証センター」(同)として本格稼動させ、「Netezza評価検証プログラム」を展開する。NPSの評価を希望する企業に無償で実機利用環境を提供、各企業は自社データにより、実際の業務環境に相当するデータ量で、事前評価/パフォーマンスの体感ができ、実機検証結果を通じ、導入検討を進めること可能となる。
NPSは国内ではこれまでに、モスフードサービスやサッポロビールのほか、大手百貨店/スーパーマーケット/電気製品量販店、総合電機メーカー、精密機器メーカーなど18社に納入しているという。エッツェル社長は「従来、海外/国内とも、製造業、流通向けの受注が多いが、通信、金融の領域では、扱われるデータ量が極めて膨大であり、市場の潜在性が高い。国内でも、今後、これらの分野からの需要を見込んでいる」としている。