早稲田大学・菅野重樹研究室(創造理工学部総合機械工学科)は27日、同大学の喜久井町キャンパスにて記者会見を開催し、新型の人間共存ロボット「TWENDY-ONE」を披露した。7年間の産学連携プロジェクトにより開発されたもので、生活環境の中で人間と共存するための各機能が統合されている。
菅野重樹教授の研究室では「人間との共存」をテーマにロボットが開発されており、これまでに「Hadaly-2」(1997年)「WENDY」(1999年)などのプロトタイプを開発してきた。TWENDY-ONEはWENDY(Waseda ENgineering Designed sYmbiont)シリーズの最新ロボットということで、「21(Twenty-One)世紀」にちなんで命名されたという。
人間と共存するためには、「安全性の確保」「触れ合えること」「コミュニケーションがとれること」が必要と菅野教授。その上で、何かの役に立つためには、「巧みさ」「パワー」「移動能力」が必要だという。ロボットというとエンターテイメント向けや2足歩行型などが注目されがちだが、それらが「この条件を全て満たすことは現時点では難しい」(菅野教授)。
TWENDY-ONEは、腕(7×2)、手(13×2)、首(3)、胴(4)に計47自由度を持つヒューマノイドロボットで、移動にはオムニホイールと呼ばれる全方向移動機構を採用した。コントローラやバッテリを内蔵しており、利用者からの音声指示により、様々な作業をすることが可能。高出力モーターの採用により、両腕で35kg程度まで支えることができる。
特徴としてまずあげられるのは高機能なハンド部で、様々な把持形態をとることができる4本指を装備。手のひら側には分布型圧力センサーを搭載しており、持ち直しのような高度な動きも可能となっている。
安全性への配慮としては、ロボット表面に柔軟な素材を採用したほか、腕部の関節にはバネによる柔軟機構を搭載。人間と衝突しても瞬時に力を受け流すことが可能だ。そのほか、ボディの各所に6軸力覚センサー・分布型圧力センサーを搭載しており、人間との接触を検知することもできる。
TWENDY-ONEは介助支援・家事支援などの用途が期待されており、機能説明の後には、実環境におけるデモも行われた。まずはベッドからの起き上がりを補助し、"おばあさん"(実際には若い男性)を車椅子へ。台所では、"おばあさん"からの指示により、冷蔵庫のケチャップを取り出し、トーストを配膳、トレーをテーブルまで運ぶ――といった様子が紹介された。
今回はまだハードウェアが完成したという段階であり、TWENDY-ONEを使った研究はこれからといったところ。すぐに商品化されるようなものではないものの、実用化に関しては「2015年を目標としている」と菅野教授。これまでの開発費は「数億円ではきかない」そうだが、実用化段階での価格については、「まずは2~3,000万円程度に抑えられるようにしたい」とした。