サン・マイクロシステムズは27日、Solaris on x86 (Solaris 10 x86/x64版) のビジネス利用者を対象とした新コミュニティ「Solaris Community for Business」の設立を発表した。同コミュニティは、昨今の企業システムに求められる様々な課題を解決する選択肢のひとつとしてSolaris on x86の価値を広め、その普及・利用拡大を目指す目的で設立された。
発足時の参加企業は、Solaris on x86を利用するシステムインテグレータやISV/IHV(独立系ソフトウェア/ハードウェアベンダー)を中心とする全32社(具体的な参加企業名はプレスリリースを参照)。事務局はサン社内に設置され、日本におけるSolaris採用促進の主軸として活動していくとのことだ。
サン・マイクロシステムズは2005年にx86に対応したSolarisをリリースしており、現在では944システムがHCL(Hardware Compatibility List)に登録されているという。そのうちの850システム以上が非SPARC系だとのことで、Solarisユーザに対して幅広い選択肢が用意されていることがわかる。
同社代表取締役社長を務める末次朝彦氏は設立記者会見において、昨今の企業システムに求められる課題を次のように挙げている。
- ROI(投資収益率)の向上/TOCの削減
- 堅牢性の強化/運用継続性の強化
- 強固なセキュリティの実現
同氏は、Solaris on x86は上記の課題を解決するための優れた機能を有するが、x86/x64サーバ市場においてはその価値がまだ浸透していないと指摘する。そこでSolaris Community for Businessの活動によって顧客認知度を向上させるとともに、"高付加価値OS"としての位置付けを確立して市場シェアの拡大を図っていくという。
では、各課題に対するSolaris on x86の優位点とは具体的に何なのか。末次氏は以下のように説明する。まずROIの向上/TOCの削減に対しては、SolarisコンテナやSolaris DTraceの優位性がある。Solarisコンテナは、ひとつの物理サーバ上に仮想的に複数のアプリケーション実行環境を構築する機能だが、仮想化による性能劣化がほとんど生じない点が大きな特徴。さらに柔軟なリソースコントロール機能を有することで動的なシステム環境の変更を容易に行うことができる。DTraceはシステムのあらゆる場所にモニタポイントを設定することで詳細なボトルネック解析を行うことができる機能。システムコールや関数、トランザクションなど様々な単位による解析が可能であり、オープンソース化されたことによって業界での注目度も高い。
堅牢性および運用継続性に対しては、Solaris ZFSが大きな武器となる。ZFSはストレージプールの概念を実装したファイルシステムで、サービスを継続したままで動的なディスクの追加/削除を行うことができる。また、優れたコピーアルゴリズムによってデータ破壊の危険性を極限まで排除している点も大きな特徴と言える。その他、堅牢性についてはOracle 10g RACを用いた検証実験によってCPU利用率が100%の場合でもスループットの劣化が生じないというデータが得られており、高負荷が予測されるミッションクリティカル環境における利用も期待できるという。
セキュリティ面については、Solarisの持つセキュリティ機能に加えて、Trusted Solarisの機能を追加できる「Trusted Solaris Extensions」が用意されている。Trusted SolarisはSun Microsystemsが米国防総省と共同で開発したセキュアなSolarisであり、最小特権モデルや柔軟かつ厳密なアクセス制限が実装されている。
末次氏は、このように3つの課題に対する有効な解決策を持つSolaris on x86を普及させるため、Solaris Community for Businessの参加企業で一致団結していくと語っている。具体的な活動としては、まずSolaris on x86ベースの様々な製品やソリューション、サービス、コンサルティングなどを対象として多角的なプロモーションを行っていくという。最新技術や成功事例、さらなる合理化や改善のための要点なども積極的に公開していく。
また、参加企業同士でノウハウやソリューション情報、検証データ等をできる限り共有し、今後の技術の向上に役立てていくとのことである。その他、既存の参加メンバーに閉じることなく、積極的なコミュニティの拡大を推進していく。末次氏によれば、同コミュニティの活動を中心としてSolaris on x86の普及を促進することにより、x64/x86サーバ市場において2010年までに10%以上のシェアの獲得を目指すという。