慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス(SFC)の研究成果を発表する産学連携イベント「慶應義塾大学SFC Open Research Forum 2007(ORF2007)」が22日から2日間、東京都港区の六本木アカデミーヒルズ40で開催されている。12回目となる今回のテーマは「toward eXtremes - 未来創造熟の挑戦 -」。未来を切り開くためにあえて極限の世界に踏み込むような研究を行いながら、その研究成果をどう社会に結びつけるかについて、数多くのセッションや展示が行われた。

ORFでは2003年から、慶應義塾大学卒業の優れた起業家を表彰する「SFC Entrepreneur Award」を開催している。今回は、卒業生だけでなく、高校生を含めた在学生にまで対象を拡大。「塾生・塾員部門」の22人の応募の中から、「The Best Web Service Award」「The Best Business Process Award」「The Best New Markets Award」「あずさ監査法人賞」「台湾賞」の5つの特別賞と、「SFC大賞」の表彰を行った。

The Best Business Process Awardは、総合政策学部4年生の木下優子氏が受賞。バッグなどのアパレル商品について、ユーザがデザインを自由に組み合わせてから発注できるデザイン改変システムを提案。同システムで作られた商品を「Orihime(織姫)」のブランドでインターネットなどで販売するというビジネスモデルが評価を受けた。

「The Best Business Process Award」を受賞した木下優子氏

「SFC大賞」を受賞した関山和秀氏

また、The Best New Markets Awardには、看護医療学部を2005年に卒業した川添高志氏が選ばれた。川添氏は、忙しくてなかなか血液検査を受ける時間がない会社員や、大病院で何時間も待たなければ同検査を受けられない高齢者らを対象に、エキナカ(駅構内)でも血液検査を受けることができるようにする、「エキナカ血液検査ステーション」を提案。東京都内の10拠点に同ステーションを設け、1人2,000円で血液検査を受けると試算すれば、3年目には約2,000万円の営業利益が得られるとプレゼンテーションした。

最高賞となるSFC大賞は、あずさ監査法人賞も受賞した、スパイバー株式会社社長の関山和秀氏が受賞。同氏は、慶応義塾大学先端生命科学研究所博士課程1年に在籍しており、今年9月に同社を設立。有用微生物の盗難を防ぐために、ゲノムDNAにデータを書き込むことのできる技術「Cellright(セルライト)」を開発し、セキュリティ上の課題を乗り越えたことが評価された。

関山氏は、「製薬企業や微生物による有用物質の生産を行っている企業などを対象に事業を拡大し、3年後には海外展開したい」と抱負を語った。

また、同日行われたセッションの1つ「アジア・アントレプレナー創発会議」では、SBIホールディングスと慶應義塾大学が、アジアにおける大学発ベンチャーの支援を行うことで合意、MoU(Memorandum of Understanding)の調印式を行った。

大阪大学中之島センターでMoUに調印するSBIホールディングス代表取締役執行役員CEOの北尾吉孝氏

アジアにおける大学発ベンチャーの支援について合意するMoUに調印する慶應義塾大学の村井純氏

SBIホールディングスは、慶應義塾大学がアジア13カ国に持つ、ITに強い27大学・研究機関をパートナーとするネットワーク「SOI Asia(School on Internet Asia)」と連携し、新たなファンドを設立する予定としている。

ORF会場とビデオ中継で結ばれた大阪大学中之島センターにおいて、同会場の慶應義塾大学常任理事で環境情報学部教授の村井純氏とともにMoUに調印したSBIホールディングス代表取締役執行役員CEOの北尾吉孝氏は、「21世紀はインターネットとバイオテクノロジーが世の中を動かす時代となる。シリコンバレーのような産学連携の仕組みを慶應大学とアジア各国の教育・研究機関と当社が作ることで、新たな企業グループを作っていきたい」と語っていた。

ORF2007は、23日も午前10時から各セッションと展示が行われる。