ネバダ州リノで開催中のSC07において、11月12日に第30回の「Top500」リストが発表された。Top500はスパコンの性能をLINPACKという連立一次方程式を解くプログラムの性能で比較してランキングするもので、スパコン性能の一面的な評価という批判もあるが、ランキングが容易というメリットがあり、一番広く用いられている。
今回、トップとなったのは、前回に引き続きローレンスリバモア国立研究所(LLNL)のBlue Gene/Lシステムである。しかし、前回と比較して約60%プロセサコア数を増し、今回は212992コアで478.2TFlopsを叩き出している。性能は前回の280.6TFlopsから約70%向上しており、コア数より性能の方が向上率が少し大きいところを見ると、アルゴリズムなどが改良されたと思われる。なお、連立一次方程式のサイズは、コンピュータの能力アップに伴い巨大化しており、今回LLNLのBG/Lが解いたのは、2456063元の連立方程式である。
第30回Top10リスト(出典:top500.org) | |||||
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順位 | 設置機関 | メーカー | プロセッサシステム | 国 | 性能 |
1 | DOE/NNSA/LLNL | IBM | eServer Blue Gene Solution | United States | 478200 |
2 | Forschungszentrum Juelich (FZJ) | IBM | Blue Gene/P Solution | Germany | 167300 |
3 | SGI/New Mexico Computing Applications Center (NMCAC) | SGI | SGI Altix ICE 8200, Xeon quad core 3.0GHz | United States | 126900 |
4 | Computational Research Laboratories, TATA SONS | HP | Cluster Platform 3000 BL460c, Xeon 53xx 3GHz, Infiniband | India | 117900 |
5 | Government Agency | HP | Cluster Platform 3000 BL460c, Xeon 53xx 2.66GHz, Infiniband | Sweden | 102800 |
6 | NNSA/Sandia National Laboratories | Cray | Sandia/ Cray Red Storm, Opteron 2.4 GHz dual core | United States | 102200 |
7 | Oak Ridge National Laboratory | Cray | Cray XT4/XT3 | United States | 101700 |
8 | IBM Thomas J. Watson Research Center | IBM | eServer Blue Gene Solution | United States | 91290 |
9 | NERSC/LBNL | Cray | Cray XT4, 2.6 GHz | United States | 85368 |
10 | Stony Brook/BNL, New York Center for Computational Sciences | IBM | eServer Blue Gene Solution | United States | 82161 |
そして第二位はドイツのJulich Research Centre のBlue Gene/Pシステムである。このシステムは、BG/Lの次世代のBG/Pシステムであり、65536コアで167.3TFlopsを実現している。第3位はNew Mexico Computing Applications Center (NMCAC)のSGIのクワッドコアXeonベースのAltix ICE8200システムで126.9TFlopsである。
今回、第4位には117.9TFlopsを達成したインドのタタグループのComputational Research Laboratoriesのシステムが入った。ハードウェアとしては3GHzのデュアルコアXeonを使用するHPのBL460cブレードをInfiniBandで接続している。そして5位は、102.8TFlopsを達成したスウェーデンの政府機関のシステムである。これも4位のシステムと同様にHPのBL460cをInfiniBandで接続したシステムである。なお、4位のタタのシステムは14240コアであるが、5位のスウェーデンのシステムは13728コアでクロックも2.667GHzとタタのシステムに比べて低いために、性能に差がついている。
結果として、Top10には米国のシステムが7システム、ヨーロッパが2システム、そしてインドが1システムと言う内訳になった。
日本のシステムは、東工大のTSUBAMEシステムがClearSpeed社のアクセラレータを増強して56.43TFlops(前回レポートの約54TFlopsは筆者の聞き違いであり、訂正させて戴きます。)を達成したが、前回の14位から2つ順位を下げて16位となった。ドイツが2位で、インドやスウェーデンの新しいシステムがTop10入りする状況の中で、やはり、日本のスパコン投資は不足しているという感が強い。
Top500に入ったシステムを国別に見ると、米国がダントツの284システムで過半数を占める。ヨーロッパ全体では149システムで、その中ではイギリスが48システム、ドイツが31システムという状況である。アジアは58システムで、その中で、日本が20システム、台湾が11システム、中国が10システム、インドが9システムと言ったところである。
また、Top500に入ったシステムをメーカー別に見ると、IBMが232システム、HPが166システムで、この2社でほぼ80%を占めている。また、使用されているプロセサをメーカー別に見ると、Intelが354システム、AMDが78システムであり、これに次いでIBMが61システムである。しかし、今年6月の第29回Top500と比べると、Intelが289システムから354システムと大幅に伸張したのに対して、AMDとIBMはシステム数を減少させており、Intelの一人勝ちの様相を呈している。