オンラインでの有料コンテンツ配信ビジネスは成り立つのだろうか - オンラインに活路を見い出そうとしている事業者にとって、事態はより厳しい方向へと向かっているのかもしれない。豪News Corporationを率いるRupert Murdoch氏はオーストラリアのアデレードで12日(現地時間)に開催された株主とのミーティングの中で、News傘下のDow Jonesが運営する経済紙「Wall Street Journal」のオンライン版(以下: WSJ.com)を無料化する方針だと、WSJ.comを含む複数のメディアが報じている。WSJ.comはオンラインでの有料ニュース記事配信を成功させた数少ない事業者の1つだが、Murdoch氏によれば無料化で購読者を増やし、広告売上を増加させるのが狙いだという。
現在、米国を含む世界の新聞社は紙媒体の購読者数や広告を含む売上が減少していくなかで、オンラインでの記事配信に1つの活路を見い出している。その意図はさまざまだが、オンラインでの広告収入を目当てにする一方で、少ないオンライン広告による収益よりも、願わくば本紙の購読増につなげたいと考える事業者も少なくない。米News York Timesのように、無料配信から有料配信、そして無償での会員登録制へと移行し、現在は無料オンライン版と内容を差別化した専用の有料サイトを別に用意して収入増を図るケースもあれば、英Financial Timesのように回数制限つきで有料オンライン版を無料開放するケースもある。また現在のWSJ.comでは、非登録ユーザーに対して記事のリード部分を無料で読めるようにしており、月額約10ドルの有料登録へとユーザーを誘導している。
このように購読者減や広告収入減に怯え、記事有料化へと踏み切れない事業者が多いなか、登録者数が100万人に達し、各ユーザーが毎日少なくとも10 - 15分間最新ニュースのチェックを行っているWSJ.comは、有料記事配信ビジネスでの数少ない成功例といわれる。だがWSJ.comのオーナーであるMurdoch氏は、Dow Jonesに対して買収が成功する以前からWSJ.comの無料化と、それによる購読者数拡大で広告売上を増やす方針を各メディアに語っており、今回の株主とのミーティングでの発言で、その流れがより確実なものになったと思われる。有料記事配信の分野でトップを走るWSJ.comが無料化することで、それに続く他の新聞社/雑誌社などの配信事業者による記事有料化は事実上難しくなったといえるだろう。