富士通は15日、ICタグなどのRFID(Radio Frequency Identification)に関する市場予測や同社の取り組みを紹介する記者説明会を、東京都千代田区で開いた。同社によれば、国内のUHF帯RFID市場は、現在の企業内需要中心から企業間需要や社会インフラへと応用範囲が拡大、2010年には市場規模が5,000億円にまで達し、"ブレークする"と予測している。同社は今後こうした見通しに基づき、RFIDソリューションの開発をさらに加速させる。
RFIDは、ID情報を埋め込んだタグとリーダ・ライタとの間で、電磁界や電波などを用いた近距離の無線通信をすることにより、情報のやりとりができる製品や技術全般を指す。バーコードとは異なり、同時に複数のタグを読み取ることができる。電池を内蔵しないため電波の飛ぶ距離が短い「パッシブタグ」と、電池を内蔵し距離が比較的長い「アクティブタグ」があり、富士通はパッシブタグを中心に製品化している。
また同社は、周波数が952-954MHzのUHF帯RFIDに焦点をあてて開発しており、「TagFront」というブランドで市場展開している。現在は図書館の蔵書管理や製造現場での導入、資産管理など企業内需要が中心となっているが、同社ビジネスインキュベーション本部開発部マーケティングGr担当課長の植竹光夫氏は今後の国内のUHF帯RFID市場について、「社会インフラへの実装や個々の商品への貼り付けの拡大により、2010年ごろに市場規模は約5,000億円に達し、"ブレーク"するのではないか」と述べ、今後数年間で急速に市場が拡大するとの見方を示した。
同社は、チップとアンテナからなるいわゆる「タグ」だけではなく、情報の読み書きができる「リーダ・ライタ」などのハードから、ミドルウェア、業種・業務ソリューションなどを一括して提供するビジネスモデルを採用している。また、これらのシステムの設置場所の選定などに関わるような、各種の実験・支援サービスも提供している。
さらに、これまで読み取りが難しかった金属製品に直接貼り付け可能な「金属対応タグ」や、衣服に装着しクリーニング可能な「ソフトリネンタグ」なども開発。後者はユニフォーム管理システムとして、帝国ホテルや日本通運などに採用されている。製造現場では、富士通の那須・小山工場間の部品調達システムとして採用、ジャストインタイムの部品管理に大きく貢献しているという。
記者説明会の後は、同社の先端的ソリューションを紹介する「netCommunity」でデモンストレーションが行われ、スーパー等で商品にRFIDタグを付けてリーダにかざすと、過去の温度管理などの履歴が出るなどの応用例が実演された。