マサチューセッツ工科大学(MIT)のInformation Services and Technologyグループが、1960年代に開発されたオペレーティングシステム「Multics」のソースコードを公開した。ライセンスには、初期開発者の表示を再配布の条件とするBSDスタイルのものが適用される。

Multicsのオープンソース化は、1991年に米Honeywell社のコンピュータ部門を買収した仏Bull社により決断された。Multicsは、Bull社が1985年にMulticsの開発を終了した後、1988年にはMITによるサポートも終了していた。

「Multiplexed Information and Computing Service」を語源とするMulticsは、MITの調査プロジェクトとして1964年に誕生。1965年秋にはMITとゼネラル・エレクトリック(GE)、AT&Tベル研究所との共同プロジェクトに発展した。1969年にはベル研が脱退したが、1970年にGEのコンピュータ部門を買収したHoneywellにより商品化されている。

Multicsは商業的な成功は収めなかったものの、現在に至るまでのOSの設計に与えた影響は大きい。コンピュータの動作をごく短い時間で区切り複数のプログラムを並行動作させる「タイムシェアリングシステム(TSS)」に対応したほか、外部記憶装置へのアクセスを容易にするための「ファイル」の概念、そしてファイルを効率的に管理するための「階層化ファイルシステム」など、Multicsではじめて実装された機能も多い。ベル研で誕生したUNIXは、Multicsプロジェクトに参加していたKen Thompson氏を中心に設計されたこともあり、TSSや階層化ファイルシステムなど多くの機能がMultics由来だといわれている。