1日、ついにAdobe MAXの日本初上陸が果たされた。Adobe MAXは、アドビ関連のクリエイティブ/開発者向け技術の総合カンファレンス。日本は、米シカゴ (9/30~10/3)、スペインのバルセロナ (10/15~10/18)に続く、本年度3ヶ国目の開催地となる。

イベントの皮切りとなる基調講演では、まずアドビシステムズ代表取締役社長であるGarrett Ilg氏による日本語のあいさつで始まった。同氏が日本のMAXで強く打ち出した姿勢は、モバイルへの注力とコミュニティの重要性だった。この2つは、基調講演の中でも繰り返し強調されることになる。

次に米AdobeチーフソフトウェアアーキテクトのKevin Lynch氏が登壇し、大きく「動画」「RIA」「ツール」に分けてAdobeテクノロジーの紹介を行った。

Garrett Ilg氏

Kevin Lynch氏

進化するFlashの動画技術

「動画」においては、動画配信のデファクトスタンダードがFlash技術によるものであることを強調。具体的には、現在のWebビデオの70%がFlashによって配信が行われているという。その上で、動画プラットフォームとしてのFlashがまだまだ進化をつづけていることを紹介した。

まずは、現在Adobe Labsにてリリース候補版が公開されている「Flash Player 9 Update (コードネーム「Moviestar」)」では、動画形式としてH.264をサポートしていることを説明。H.264は、従来の動画圧縮方式であるMPEG-2などよりもはるかに圧縮効率が高く、高画質を保証する国際規格だ。

また、Flashビデオの閲覧が現在ブラウザ内に限られていることを補完するためのツールとして「Adobe Media Player」を紹介。Adobe Media PlayerはAIRで構築されたメディアプレイヤーだ。オーバーレイによる広告の埋め込みや、動画の改ざん防止などの機能を備えるため、単なるツールとしてではなく、コンテンツの配信によって企業が利益を得ることのできるプラットフォームだと位置づけられている。

Adobe Media Player

またFlashストリーミングのサービスプロバイダとして、新たにIIJが参画することが発表された。

RIA技術を支えるFlex/AIR

「RIA」に関しては、やはりAIRとFlexについての話が中心。先月アドビが買収した、Flexベースのワードプロセッサソフト「Buzzword」が、ブラウザ上のFlexでも、デスクトップ上のAIRアプリケーションとしても動作するのをデモすることで、FlexとAIRがどれほど高い利便性を実現するプラットフォームであるかを見せつけた。

ブラウザ上で動作しているBuzzword

AIRはまだ正式リリース前にも関わらず、非常に注目を集めている技術。対応アプリケーションの数は日々増え続けており、今回の基調講演でも、以下のように多くの例が紹介された。

  • Tweetr : Twitterクライアント
  • Snippage : あらゆるWebサイトを切り抜き、デスクトップウィジェットに変換できるツール
  • Adobe MAX CUPウィジェット : アドビ主催で開催されたフットサル大会の情報を伝えるアプリ
  • Pronto! on AIR : Communigate SystemsのAIR版メールクライアント。高度なドラッグ&ドロップ機能がデモされていた
  • Analytics Reporting Suite for Google Analytics : Google Analyticsの分析結果を表示できるAIRアプリ
  • Paypal Desktop : Paypalの利用状況を表示できる
  • Digimix : AIRで作成された音源ミキサ
  • ANTHROPOLOGIE : カタログショッピングサイト「ANTHROPOLOGIE」をデスクトップから。アドビが買収したScene7の技術が使われている。

ここで紹介したサンプルの多くは、実際にダウンロードして試すことが可能だ。以下は、実際にいくつかのアプリを筆者のマシンで動かしてみた画像だ。

Tweetr

Adobe Max CUP

Analytics Reporting Suite for Google Analytics

Digimix

さらに最先端を行くAdobeテクノロジー

さらに、2008年以降に全貌を現すと見られる最先端テクノロジーについての紹介も行われた。

現在、「Astro」というコードネームで呼ばれているFlash Playerの次期バージョンでは、新しいテキストレイアウトエンジンの搭載、3Dのサポートなどが予定されている。

RIAデザイナ向けツールとして期待がかかるThermoのリリースは、2008年にβ版がリリースされる予定とのこと。Thermoについてはこちらの記事で詳しく紹介した。

Thermoのデモ画面

Adobeテクノロジーの採用が進むDocomo

初日の基調講演で、最後を飾ったのはNTTドコモ マルチメディアサービス部 執行役員の夏野剛氏によるプレゼンテーションだ。

Docomo夏野氏

同氏のプレゼンは「Adobe × DoCoMo」と題して、DoCoMoのメディア事業におけるAdobe技術の重要性について、具体的な数値を上げながら解説を行った。

携帯キャリアの中でも、DoCoMoにおけるFlash対応端末の割合は群を抜いているという。Flash対応端末の累計販売台数は7,961万台、i-mode menu (ポータル)へのアクセスのうち94%がFlash対応端末であるとのこと。また、PDFに対応した端末の累計販売台数も2,591万台に昇る。さらに、2005年にサービスが開始され、契約数が1,300万を超えたiチャネルは、AdobeのFlashCastテクノロジーが使用されているという。

このように、AdobeとDoCoMoでは、これからも密な連携をとりつつ、日本のモバイルをさらに変革していくつもりだとのことである。

Adobe × DoCoMo