米Dellのマイケル・デル会長兼CEOが来日し、新たな2つの方針を打ち出した。
ひとつは、新たな戦略として掲げた「Simplify IT(ITのシンプル化)」戦略である。
マイケル・デル会長は、「ITのシンプル化は、Dellの哲学である」と位置づけ、「これまで当社が取り組んできたデルモデルやスケールアウト、標準化戦略はそれぞれに重要なコンセプトであったが、ITのシンプル化はこれだけではカバーできない"エンド・トゥ・エンド"の領域を指すものになる。単にハードのコストダウンだけでなく、ITプロセス全般の課題を解決するものになる」とする。
調査会社の調べによると、企業におけるIT投資コストの約7割が、既存システムの運用や保守に回されており、戦略的IT投資や新規IT投資に向けられるのはわずか3割といわれる。
「企業の成長を妨げる阻害要因となっており、その背景には、ITが複雑化していることが挙げられる」とデル会長兼CEOは語る。Dellでは、ITの標準化/統合/自動化によって、ITプロセス全体のシンプル化を実現する手法を提唱。これにより、人材の有効活用/生産性の向上、ビジネス拡張に向けた資源の集中を実現できるという。
「もともとDellは、業界をシンプル化するために事業をスタートさせた企業。それは今でも同じだ。複雑化しているITを、Dellでは工場においてシンプル化の考えのもとに設計し、顧客はこれを迅速に配備し、ITを低コストで運用し、さらにITを賢く発展させることができるようになる」と語る。
競合他社のアーテキクチャでは、システム構築に78個のボックス(サーバ)が必要であったのに対して、Dellのアーキテクチャでは、2個のボックスで構築できたことを引き合いに出し、Dellのシンプル化戦略が効果を上げていることを訴える。
ITのシンプル化戦略の第一歩として、同社では、「ITシンプル化評価ツール」の提供を発表。「ITライフサイクル全般における効率性」「ITスタック各階層における管理能力」「現在所有しているITの柔軟性」を計測する。さらに、顧客の予算に基づき、顧客が希望する一定時間枠のなかで成果を上げることを目的に、ITをシンプル化する数か年プランの作成を行う「ITシンプル化アセスメントサービス」を試験的に導入していくことを発表した。
また、今後は、パートナーとの協業を強化することでコンサルティング領域にも進出する考えをあることを示した。
デルが、こうした新たな方針を打ち出した背景には、従来のハードによる利益確保に加え、新たな収益モデルを模索し始めたことがある。 顧客企業は、年間IT投資において、ハードの5 - 6倍ものコストを管理および運用などに投資している。Dellは、サービス/サポート事業領域の比率を拡大することで、収益性の改善に取り組む考えだ。
Dellはここ数年、テクノロジコンサルティングサービスや、ソリューション事業の拡大に乗り出しており、今回のITのシンプル化戦略が、それらを集大成した戦略ということになりそうだ。