マイクロソフト 代表取締役兼COO 樋口泰行氏 |
ビジネス向けのIT製品やソリューションの導入事例を紹介する展示会「Biz Innovation 2007」が24日に開幕。イベントのオープニングセッションとして、マイクロソフト代表取締役兼COOの樋口泰行氏による"社員の潜在能力を引き出すイノベーション"と題した講演が行われた。
"People ready business"を企業理念とするマイクロソフト。樋口氏の考える企業再生の基本は、社員ひとりひとりの"心"の活性化にあるという。同氏は「社員の力を引き出す根本はコミュニケーションにある」と述べ、給与や待遇といったインセンティブ以上に、職場内における信頼できる人間関係が重要であるという考えを示した。
一方、円滑なコミュニケーションを実現するツールは、電話、FAXに始まり、今では携帯電話、電子メール、Web会議、IM、PDAといった高度なものに進化している。しかし樋口氏は、「新たな技術革新によってもたらされたこうしたツールは技術力だけが先行してしまいがちだが、使い勝手やパフォーマンスが成熟していなければ、ユーザーには定着しない」と指摘。さらに「ネットワーク環境、ハード、ソフトのパワーが整った今、まさにこうしたデジタルコミュニケーションツールを実用できる時代になった」と述べ、さまざまなコミュニケーションツールを統合することによりコミュニケーションを効率化し、生産性を向上させることを意味する"ユニファイド・コミュニケーション"の重要性を強調した。
"ユニファイド・コミュニケーション"を実現するアプリケーションプロバイダーとして、マイクロソフトは11月に「Office Commnunitaions Server 2007」の出荷開始を予定している。このソリューションサービスは"プレゼンス情報"(相手の所在情報や在籍状況)を軸にした統合コミュニケーション基盤で、Microsoft Office製品などの同社のアプリケーションとコミュニケーションツールが連携し、最小限のステップで効率的なコミュニケーションを図ることができる。具体的には、Outlookと連動し、メール画面から相手のプレゼンス状態を確認し、ダイレクトにIMやWeb会議システムなどの他のコミュニケーションツールを起動させ、相手を呼び出すことが可能になる。
マイクロソフト インフォメーションワーカービジネス本部 越川慎司氏 |
同サービスのデモンストレーションを行った、マイクロソフトのインフォメーションワーカービジネス本部の越川慎司氏は「相手側のプレゼンスを確認した上でコンタクトが取れるため、コミュニケーションを円滑に進めることができる」とメリットを謳った。また、最大250名まで接続可能なWeb会議ツールでは、資料を共有する際にも指定されたスペースにファイルを直接ドラッグ&ドロップで移動するだけでサポート可能な形式に自動で変換してくれるなど、シームレスな利用が可能なほか、音声転送機能により、会社のPBXにかかってきた電話を移動先のパソコンや携帯電話などに転送することもできる。さらに、登録相手に応じてプレゼンスのアクセスレベルを設定することが可能な点も特長だ。
一方、調査会社のガートナーによると、現在のユニファイド・コミュニケーション市場を取り巻く環境は、市場と技術が急速に成熟しながらも全般的に見るとまだ初期段階にあるという。その要因として、樋口氏は「ベストプラクティスが確立されていない」「効果が見えにくい」の2点にあると分析した。
さらに、ゲストとしてガートナージャパンの堀勝男氏がWeb会議システムを通じて登場。企業のコミュニケーション力を高めるためにはリアルタイムインフラストラクチャー(RTI)を構築すべきだと強調し、その際に志向すべき要素として「Quality of Service(信頼性)」「Agility(俊敏性)」「Economics(経済性)」の3点を挙げた。堀氏によると、PBXを設置する企業の20%がすでにIPテレフォニーへ移行しているほか、80%以上の企業が試験的にユニファイド・コミュニケーションを運用しているという。さらに「今後3年間に大半の企業がユニファイド・コミュニケーションを導入する見通しだ」と、ユニファイド・コミュニケーション市場に対するガートナーの見解を明かした。
マイクロソフトでは、すでに全世界で110社以上、日本で20社のパートナー企業とともにユニファイド・コミュニケーションの技術開発を進めており、今後もパートナー企業との協業により、この分野における展開を推進していく方針だ。また樋口氏は、そのほかにもITの力を活用した障害者支援などの活動も積極的に行っていることを明かし、「OS開発から出発したマイクロソフトだが、これからは企業のインフラを提供する会社として、ユニファイド・コミュニケーションによる企業の生産性向上に貢献していきたい」と今後の抱負を語った。