日本オラクル 社長兼最高経営責任者 新宅正明氏

日本オラクルは、RDBMSの最新版「Oracle Database 11g」の出荷開始にあわせ、その概要を紹介する「OracleSummit 2007 in TOKYO Oracle Database 11g Launch」を東京・千代田区で開催。同社の社長兼最高経営責任者 新宅正明氏は冒頭、「Oracle Database 11gは、顧客の声を聴き、製品に取り込み、非常に大きな革新をすることができたと考えている。日本では、ビジネスパートナーが1,000社を超えている。ORACLE MASTERの取得数は15万に達し、多くのエンジニアに支持されている。これらのファミリーとともに、オラクルは日本市場に浸透できた。顧客の成功こそ重要だ」と述べた。

基調講演には、Oracle Databaseの開発責任者である、米オラクルのオラクル・サーバー技術担当 シニア・バイスプレジデント アンドリュー・メンデルソン氏がまず登壇した。今年は、1977年に、同社が設立されてからちょうど30年になることから、メンデルソン シニア・バイスプレジデントは「この30年間、データベースでは、他社に真似のできない技術を提供してきた」と語った。

米オラクル オラクル・サーバー技術担当 シニア・バイスプレジデント アンドリュー・メンデルソン氏

メンデルソン氏は、かつて大型汎用機がコンピュータの主流だった時代には、同一のデータベースであっても、OSごとにそれぞれ異なった対応版が必要であったことを指摘、「一度C言語で書き上げたら、すべてのプラットフォームに移植性をもたらそうと考えた。ひとつのベンダーの製品にだけ囲い込まないことがTCO削減につながる」と述べ、Oracleでこれを実現させた。オープン化、標準化を進展させてきたことが、Oracle Databaseの発展に結びついた。

Oracle Database 10gでは、グリッドコンピューティングに対応した。グリッドコンピューティングは「卓越した高度なパフォーマンスを提供することができた。RAC(Real Application Clusters)は、安価なサーバーを束ね、拡張性と高い耐障害性をクラスタリングによってもたらした」(メンデルソン氏)ことで、Oracle Databaseの新たな機軸となった。メンデルソン氏は「オラクルは顧客と対話し、彼らの声を製品に反映させてきた」と話し、近年、企業でのITには、システムを止めることなく頻繁に変更を加えるという、一見、相反する要求が突きつけられており、これに「応えることがオラクルのチャレンジ」として、Oracle Database 11gはこのような要望に対する同社の回答であることを強調した。

トヨタ自動車 ITマネジメント部 システムデザイン室長 加藤雅章氏

トヨタ自動車は、同社のシステム開発・稼動環境の改善に向け、オラクルに対し、Databaseの改善を要望したという。それは、「基本SQLの性能改善」「アプリケーション開発効率向上のための機能改善」「アプリケーションサーバとの親和性向上」を基本としていた。メンデルソン氏に続いて登壇した、同社ITマネジメント部システムデザイン室長の加藤雅章氏は「Oracle Database 11gは、これら3つの点に対応できている」と話す。

日本オラクル常務執行役員システム製品統括本部長の三澤智光氏は「日本では、IT支出のうち、約80%はシステムの運用管理コストで占められている」と指摘、これらは本来、競争力向上のための施策や、経営情報基盤の構築などに充てられるべき、と主張した。Oracle Database 11gは、「このような運用管理、維持にかかるコストを大きく削減するための新機能を搭載している」と語る。

日本オラクル 常務執行役員 システム製品統括本部長 三澤智光氏

「システムの設計と構築を進める局面と比べ、システムが稼動し、実際の運用段階の方が圧倒的に長い期間にわたる。しかし、設計・構築時のコスト意識は高いにもかかわらず、運用期になるとコスト意識が高い企業は少ない」(三澤常務)状況があり、「運用のフェーズでのテスト不足が、障害発生率の増大を引き起こしている」(同)という。

Oracle Database 11gは、「システムの信頼性向上をより少ないコストで実現」「データ量の爆発的な増加への対応と非構造化データのビジネス活用」「IT人材不足を解決」の3点に特に焦点を当てている。

「システムの信頼性向上をより少ないコストで実現」では、「Oracle Real Application Testing」機能により、テスト準備の自動化、準備期間の短縮化が図られ、データベースやOSのアップグレード、ハードなどのシステムを変更するような場合、実際のアプリケーション稼動環境をキャプチャーして、事前のテストを可能にする。

「データ量の爆発的な増加への対応と非構造化データのビジネス活用」の点については、新しいデータパーティションの新機能が用意されており、データパーティション作業の多くを自動化、鮮度、重要度などを基準に、情報を優先度で区別し、保存の仕方などを効率化する、情報ライフサイクル管理の支援とストレージ管理のコスト低減化を目指している。また、データ圧縮機能をさらに拡張した「Oracle Advanced Compression」を備え、データ圧縮率を2~3倍程度向上させ、ストレージ資源をより有効に活用できるようにした。非構造化データにも対応している。

「IT人材不足を解決」の対策としては、自動管理機能がさらに追加され、自動メモリ・チューニング、最適なパーティショニングを管理者にアドバイスする「Partitioning Advisor」があるほか、障害が発生した場合、解決のために必要な情報を収集、それらをパッケージ化して、サポートセンターに送付、障害の原因を突き止め、障害発生の防止につなげることなどができる。