10月3日と4日に開催された次世代スーパーコンピュータ・シンポジウムの一環として、今回、新たな試みとして若手の研究者によるポスターセッションが行われた。42件の応募の中から書類審査で選ばれた30件の研究者がホールに幅1m程度のスペースを与えられ、研究内容を説明する1枚のポスターを貼り、その横に立って、立ち寄る人に研究内容を説明するという形式の発表である。このポスターセッションは、初日と2日目の昼休み時間に開催され、多くのシンポジウム参加者が立ち寄り、説明を聞いたり発表者と質疑を行ったりしていた。

なお、本稿に掲載した紹介スライドの内容については、それぞれの研究の発表者と所属機関に著作権があり、許諾を戴いて写真の掲載を行っている。

地震 - 津波連成シミュレーション

東大地震研の齋藤竜彦氏らの発表は、地震 - 津波の連成シミュレーションというタイトルで、海底で発生する地震のシミュレーションと、その際の海底変動により引き起こされる波の伝搬のシミュレーションを組み合わせ、沿岸各地での津波の規模と到着時間をシミュレートするものである。

従来、津波の伝搬解析には線形長波方程式という簡便な方法が用いられてきたが、この方法では日本海溝などの深い海溝を伝わる津波を正確に計算することは出来なかったという。そのため、齋藤氏らは、スパコンでNavier-Stokes方程式(流体の振る舞いを記述する方程式)を解き、津波の伝搬を高精度で計算している。

シミュレーション例として示された1944年の南海地震のモデルでは、紀伊半島から関東を含む地域を水平方向400m、垂直方向200mのメッシュに区切った南海トラフの地下構造モデルを作り、地球シミュレータで地震の発生状況のシミュレーションを行った。そして、その結果の海底変動のデータを用いて津波シミュレーションを行っている。

一方、海水部分は水平方向1Km、垂直方法100mのメッシュでモデル化し、Navier-Stokes方程式を解いている。こちらの計算はベクトルコンピュータ向きでないので、地球シミュレータではなく、Opteron 32CPUのクラスタを用いて実行している。この方法により、深い海域を伝搬する津波に対する計算精度が高まったという。