SAPジャパン インダストリ事業開発 バイスプレジデント 脇坂順雄氏 |
SAPジャパンは、開発・投資プロジェクトの進捗把握、全体的視点からの最適化を支援する、ポートフォリオ管理ソフトウェアの新版「SAP xApp Resource and Portfolio Management(以下、SAP xRPM) 4.0 日本語版」の提供を開始すると発表した。同製品により、投資、経営資源の配置といった要素を監視・評価し、わかりやすい画面で可視化することが可能。戦略の歪みを防ぎ、経営上の意思決定を迅速化するとともに、事業目的に合致するよう導く。
現在、企業をとりまく環境は、IT化の進展、通信技術の発展のほか、さまざまな要因により、激しく変化しており、経営層は、製品やサービスのライフサイクル、業務の実行などに対して、迅速に意思決定することが求められている。ただし、例えば製造業の場合、新製品開発や市場投入を決定するに当たって、どの程度投資するか、並行して進行する複数のプロジェクトをどのような優先順位で進めるかなど、いわゆる「ヒト、モノ、カネ」などの経営資源の割り当て状況について正確に把握していなければ、的確かつ迅速な経営判断を下すことは難しい。
同社インダストリ事業開発 バイスプレジデント 脇坂順雄氏は「企業の内部では、さまざまプロジェクトが動いている。業務改革、リードタイム短縮、法令順守などのほか、IT業界、建設業界をはじめとするエンジニアリング系では、顧客に付いて進めるプロジェクトもある。これらは、管理ツールなどを用いてよくコントロールされてはいるが、経営資源の配分は、勘と経験と度胸により決められていることが多いのではないか。科学的根拠に基づいているプロジェクトがどの程度あるのか疑問だ」と語り、プロジェクトを進行するうえで深刻な問題が存在することを指摘する。
また、現場で多用される管理ツールはプロジェクトごとに異なる。これら別々の製品を有機的に使いこなし、プロジェクトの全体像を効率的に進行させることは「難しい」と脇坂氏は話す。どの要素を最も重視するかは管理者ごとにばらつきがあり、全体としての方向性が発散してしまうからだ。
「SAP xRPM」は統合プラットフォームであるSAP NetWeaverを基盤として稼働する。アプリケーションをそのまま適用するのではなく、目的に応じてサービスとして再統合するエンタープライズSOA(サービス指向アーキテクチャ)の発想を用い、既存の多様なシステムとも共存しながらも、プロジェクト申請、プログラム管理、結果分析といったプロセスと統合することができる。
今回の「SAP xRPM 4.0」では、プロジェクトをグループ化・階層化することができる。まず、「ポートフォリオ管理」では、各プロジェクトへの投資の量を決定するためのプログラムデータが提供される。こちらは、人的資源、資金の配置を考えるうえで利用される。また、「プログラム管理」には、プロジェクトの業績を抽出して可視化するための管理ツール、プロジェクト間の依存関係を追跡するための管理ツール、プロジェクトで利用されている経営資源を管理するためのツールが用意されている。
開発チームなど、プロジェクトの最前線からは、タスクごとの実績が抽出される。プロジェクトリーダーはそれらを材料として、予算、進捗などを管理するわけだが、「SAP xRPM 4.0」は、プロジェクトを「バケット」と呼ばれる単位で分類する。この単位は、投資分野と関連付けられており、評価項目の設定、承認プロセスの定義などが行える。
SAPジャパン ソリューションマーケティング xApps担当部長 木下史朗氏 |
また、経営層に報告される、実績、進捗などの情報を可視化することもできる。ECV(予想市場価値)チャートでは、プロジェクトの地理的分布、カテゴリー、完了日、開発フェーズ、予算、人員数、リスク、遂行状況、承認状況など示す。そのほか、バケットレポートは、プロジェクト、カテゴリ、地理的分布に関する投資の配分状況を表示する。「経営判断を行ううえでには、これらのデータが一目でわかるようになっていることが重要になる」(同社ソリューションマーケティング xApps担当部長 木下史朗氏)という。木下氏は「どのようなリスクが考えられるか、市場や競合の動向など、高い視線の評価軸をもって管理できるしくみが必要」と話す。
「SAP xRPM」は「古いバージョンでは、医薬分野の研究・開発を念頭に構築された」(同)が、今回のバージョンでは、評価項目の設定や承認プロセスの定義を簡易化したことや、収益性や戦略性、リスクの見極めなど、プロジェクトのスコアリング評価指標を拡大したことなどにより「医薬だけでなく、すべての業種に幅広く適用できるようになった」(同)。
同社では、ハイテク、化学、薬品、消費財、エンジニアリング、ITサービスプロバイダー、電力などの業界を主要な市場とみており、導入効果診断サービスや、インドの総合ITコンサルティング企業、インフォスによる日本市場向けの導入サービスなどをそろえ、国内での浸透を推進していく考えだ。