米Oracleは10月12日(現地時間)、ライバルでもあるミドルウェアベンダーの米BEA Systemsに買収提案を行ったことを発表した。Oracleによれば、米BEA Systemsの経営陣に対して同社1株あたり17.00ドルのキャッシュでの買収を提案する書簡を10月9日付けで送ったという。現在BEAが発行している株式の総数に照らし合わせれば、買収資金は総額で約66億6000万ドルに達する。この発表を受けてBEAの株価は急騰、12日の取引は前日比38%(5.20ドル)アップの18.82ドルで終えた。
2000年代前半はWebアプリケーションサーバのWebLogicで大きく飛躍したBEAだが、市場の成長が一段落するなか、次なる成長の源泉を求めてSOA(Service Oriented Architecture)を中心とした総合ミドルウェア事業へと転身し、現在ではSOAスイートの「AquaLogic」へ主軸を移しつつある。だがSOAの世界ではアプリケーション製品を武器にするOracleやSAP、サーバ製品を武器にするHewlett-Packard(HP)やIBMなどの攻勢もあり、単体のソリューションで攻めるBEAは大きな壁に直面している。そのためBEAについては、過去に何度か業容拡大を狙うライバルらによる買収の噂が流れていた。
直近では"Corporate Raider(企業乗っ取り屋)"の異名を持つ資産家のCarl Icahn氏から、BEAの売却を促す提案が行われたといわれている。Icahn氏は2007年前半からBEAの株式を買い進め、保有比率が9%弱に達した9月中旬に同社経営陣に対して「Icahn氏推薦の人物のボードメンバーへの参加」「企業価値(株価)を高めるための売却」の2つの提案を行ったことが米メディア各紙の報道で明らかになった。同氏はその後もBEA株の保有比率を着々と上げており、10月初旬時点で13%を超す水準まで株を買い進めている。Icahn氏はこれまでも同様の手順でさまざまな企業の株式を買い進めて高配当や経営への参画などを要求しており、狙われた企業の経営陣にとっては大きなプレッシャーとなっている。
Oracleによる買収提案は、BEAがIcahn氏の意向を汲む際の1つの選択肢となる。Oracleによれば、1株あたり17ドルの価格提案は11日のBEAの終値13.62ドルに25%のプレミアをつけたものだという。同社はこれがBEA株主や従業員にとって最良の選択であり、(Oracle Application Unlimitedによる)既存ユーザーの資産や投資保護につながるものになると述べている。だが前述のように現在のBEAの株価はOracleの提案額をすでに上回っており、買収受け入れの是非や今後の価格交渉に影響を与えるものとみられる。今後、Oracleの巨大化を避けたいライバルらによる買収レースへの参加も始まるとみられ、数カ月間は予断を許さない状況が続くことになるだろう。Icahn氏は今回のOracle買収について「これは始まりだ。今後はOracle以外にもHPやIBMなど、シナジー効果を生み出すライバルらが続々と参加してくる」とコメント。Oracleの提案はスタート地点に過ぎないという見解を示している。