ソウル地方警察庁は、大統領の名義を不法に利用したという人物3人を検挙したことを明らかにした。同庁によるとこの事件は、8月23日、ノ・ムヒョン現韓国大統領を始めとした政治家などの名義が、大統合民主新党からの次期大統領候補を決める選挙で、選挙人として虚偽登録されていたという。今月始めごろから3人に対する取り調べを行っている。

韓国では、各政党の代表者を選ぶために選挙を行うこととなっている。実質的には大統領候補を選ぶことになるため、大変重要な選挙といえる。この選挙に一部の一般国民が参加できる党もあり、投票する人たちは国民選挙人団といわれる。

今回ソウル地方警察庁の捜査により検挙されたのは、18歳の女子大生1人と、19歳の男子大学生2人だ。彼らは8月23日の17時から20時30分にかけて、ソウル市の鍾路区にあるPC房(インターネットカフェ)で、大統合民主新党 国民競選委員会のWebサイトに接続。ここから、あらかじめ入手していた大統領を始めとした政治家などの住民登録番号(韓国国民全員に与えられる13桁の番号)を、国民選挙人団として登録したという。

ソウル地方警察庁はこうした行為が、記録偽造、業務妨害および住民登録法違反に該当するとして、捜査を進めていた。同庁は、名義盗用に利用されたIPアドレスがソウル市鍾路区にあるPC房のものであることを特定。同PC房を捜査し、押収したPCのハードディスク5台と、モニタリングカメラによる映像で犯人を割り出したという。

今回の事件の発端は、現職のソウル市鍾路区議会議員による依頼に始まる。議員は検挙された3人のうち1人の男子学生の母親で、自分の息子を始めとした学生らに、1時間あたり5,000ウォン(約640円)の"アルバイト料"を渡して、不法な登録行為を行わせていたという。大学生たちが大統領などの個人情報を入手できたのも、区議会議員であるこの母親が個人情報が載った名簿を手渡したからこそ可能となったものだ。

この母親は大統合民主新党による競選の、とある候補者の支持者だったとされるが、今回の事件との関連は明らかになっていない。