独SAPは10月7日(現地時間)、BI(Business Intelligence)ベンダーの仏Business Objectsの買収で合意したと発表した。Business Objects株1つあたり42ユーロをキャッシュで支払い、買収総額は48億ユーロ以上になる見込み。ビジネスアプリケーションの中でBIは急成長を遂げている分野の1つ。今年3月にはSAP最大のライバルである米Oracleが米Hyperion Solutionsの33億ドルでの買収を発表しており、今回のSAPの発表を経て業界地図が大きく変化する可能性が高い。

データウェアハウスなどのシステムに代表されるBIの世界は、昨今のサーバの性能向上とMicrosoftら新興企業参入による中小企業への裾野の広がりにより、幅広いユーザー層の中で急成長を続けている。以前までであれば大企業などごく限られたユーザーしか導入できなかったソリューションが、さまざまな業務サイズや分野をカバーすることで導入のハードルが低くなったことが成長に寄与しているといえるだろう。一方でハイエンド向けの製品では従来の静的なデータ解析に加え、データ集計のリアルタイム性や、業績予測・アラートにおけるより高いインテリジェント性などが求められるようになっており、技術の高度化が進みつつある。

「Business Objectsの買収は、SAPが2005年に発表した "ターゲット市場を2010年までに倍増する" という戦略の一環にある。成長戦略を補完しつつ、ビジネスユーザーの領域での成長を加速するのがSAPの狙いだ」と、SAP CEOのHenning Kagermann氏は買収の狙いについて述べている。一方でBusiness Objectsにとっては、SAPとの合流でビジネスチャンスを増やしてBI市場の拡大が狙えるメリットがある。SAPによれば、2008年第1四半期にも買収が完了する見込みで、2009年以降の決算に大きな影響を与えることになるという。

BIの分野ではBusiness ObjectsやHyperionのほか、米Cognos、統計解析ソフトの分野で著名な米SASなどの専業大手がしのぎを削っている。またSAPやOracleの市場参入に加えて、Microsoftなどの新興勢力が中小企業ユーザーを中心にシェアを拡大しており、ビジネスアプリケーションの世界で最も熱い分野の1つといえるだろう。だが今回の買収にみられるように、大手アプリケーションベンダーによる市場の制圧や統合も同時に進みつつあり、近い将来にも大手数社による市場大再編が起こる可能性がある。