韓国ではロボット分野を次世代産業の1つとして重要視しており、技術開発も活発だ。現在、韓国政府の情報通信部は公共機関や家庭内で働くロボットを普及させようと、試験サービスを継続的に行っている。


未来に近づく「u-ロボット試験サービス」

情報通信部は「2007年 u-ロボット試験サービス」の事業者として、通信会社のKT、ロボット製作を行うED、同じくDU Robot、仁川情報産業振興院が主催する4つのコンソーシアムを選定。10月末から試験サービスに入ると発表した。

KTは市庁などの官公庁やイベント会場で案内、広報活動を行うロボットの試験事業を担当する。EDはファミリーレストランでメニュー推薦や座席予約などを行うロボット、DU Robotは遠隔モニタリングや遠隔操作などができる警備ロボット、仁川情報産業振興院はパスポート発給アシスタント業務や官公庁内で単純作業を手伝うロボット、家庭に貸し出す教育用ロボットの試験事業を行う。

今回の試験サービスでは、「RMS(Robot Management System)」というロボット管理ネットワークも構築される。これによりロボットの動作状況を遠隔地から監視したり、修理、保守したりすることも可能になるという。

試験サービスの結果次第では、本格的なサービスインへの大きな弾みとなるため、情報通信部の期待度も大きい。


情報通信部と産業資源部間の葛藤

ところでこうした政府主導のロボット事業で問題となっているのが、ロボット事業を担当する政府機関どうしの主導権争いだ。争っているのは情報通信部と産業資源部で、どちらもそれぞれのロボット関連事業を独自に進めており、お互いに譲る気配もない。

産業資源部では、当サイトでも以前取材を行ったロボットの展示販売スペース「Robot & Robot」を設置したほか、大規模なロボットテーマパーク「ロボットワールド」の助成計画、ロボットの改造、破棄などに関連した利用者の倫理を盛り込んだ「ロボット憲章」の制定を企画。情報通信部に負けず劣らず多くの活動を行ってきているのだ。

産業資源部ではこれらと同時に「ロボットファンド」の助成も計画している。これは「既存の政府予算中心のロボット産業支援方式を改善、一般人が直接投資に参加することで投資家が今後の潜在需要者にもなるという構造を作る」(産業資源部)ことを目的としている。

同部ではより多くの人がロボットファンドに参加できるよう、投資リスクを緩和する方案や、収益率向上のための税制的な恩恵など政策支援を実施するという。実際の助成は12月頃の予定だ。

これに難色を示すのが情報通信部だ。投資者の損失を政府が莫大な予算で補うのは本末転倒であるし、ロボット自体への社会的な認識が深まっていない今、一般人を対象としたファンドを作るのは時期尚早というわけだ。確かにロボットへの認識や情報が不足気味の今、たとえ政府事業であるとはいえロボットに投資するというのはリスクが高すぎるといえる。

じつはロボットワールドにしても、その事業性を疑問視する声がある。せっかく作っても客が集まり利益が出なければ意味がないからだ。さらに産業資源部では、ロボット関連の事業を担当する同部傘下の機関を作ることを提案しているが、他機関と業務内容が重複することから投資する意味があるのかと情報通信部は指摘している。

さまざまな問題を抱えながら韓国のロボット事業は進められている。2つの機関に分かれている担当機関を一本化して、スマートな投資を行える体制を整えることが、技術開発同様に重要な課題であるようだ