韓国版インターネットカフェで、若者でも安くインターネットを利用できる「PC房」の業界に今、ちょっとした騒動が巻き起こっている。改正された関連法律の規制に対応できず、経営の危機に瀕するPC房が多くを占めているのだ。


問題はゲーム産業振興法より建築法

2007年5月に改正、施行された「ゲーム産業振興に関する法律(以下、ゲーム産業振興法)」。さまざまな項目が改正された中、今になって波紋を広げているのが、いわゆる「PC房登録制」だ。

これまでPC房は、行政をはじめとしたしかるべき機関に登録せずとも営業を許されていたが、法律改正により市や区への登録を行うことが義務付けられたのだ。ゲーム産業振興法では「(PC房登録制が)施行後6カ月経過以降から適用」と述べられているので、PC房の業主たちは来る11月17日までに登録を済ませなければならない。

PC房としての登録を認めてもらうためには、いくつかの条件がある。そのうち今回もっとも問題となっているのが、ゲーム産業振興法がPC房の営業条件として定める「建築法上の面積制限」だ。

建築法では、「2種近隣生活施設」という、生活への関連性が少ない産業施設においてPC房業を行う場合、売り場面積が150平方メートル未満でなくてはならないとされている。この面積制限は以前500平方メートルだったのだが、2006年5月の改正に伴い大幅に削減された。ちなみに「1種近隣生活施設」ではPC房業はできないこととなっている。これは住宅街に位置し日常生活への関連性も深い施設ということなので、スーパーマーケットのような業種向けの場といってよいだろう。

150平方メートルを超える広いスペースでPC房を営業してきている業者は多いが、これもゲーム産業振興法および建築法に基づけば、面積基準に違反することとなる。法律違反が見つかれば、最大2,000万ウォン(約252万円/1円=7.9ウォン)の罰金と営業停止処分を受ける。

このようなゲーム産業振興法改正のきっかけになったのが、約1年ほど前、当時流行していた賭博ゲーム場が無差別に増え社会問題になったという一件だ。本来ならばPC房は、こうした賭博ゲーム場とは一線を画する場であるものの、法改正に伴ってPC房も登録しなければ営業できない業種となった。


対策なしの業種がほとんど

広告会社のNetimo Communicationsが、PC房経営者1,825人を対象に行った「PC房登録制、準備はどの程度進みましたか?」という調査によると、「既に準備を終えて登録を完了した」「ほとんどすべての準備を終えようとしている」と答えた人はそれぞれ22.4%、10%と、全体の3割強程度となった。

このほかは「より正確な情報を調べるため準備中」(28.8%)、「まだ準備段階ではない」(16.8%)、「登録制についてよく知らない」(20.8%)、「その他」(1.2%)となり、半分以上が準備段階もしくは準備以前の段階であることが明らかとなった。

また社団法人韓国インターネットPC文化協会が、同サイト上で行っている調査(10月2日時点での回答者は2,192人)によると、PC房登録制に反対する人は83.3%に上っている。反対の理由としては「PC房は賭博業ではない、誰しもが来られる健全な業種なので、登録制にしないのが当然だ」というのが44.1%ともっとも多い。

同協会によると、現在経営しているPC房が法律の条件に合わないために、全国の約6,000にものぼるPC房が廃業の危機に瀕しているということだ。


業種転換といっても立地条件が……

結局のところ廃業を避けたいと思った経営者が選択できる道は、2つ残されている。1つは法律条件に合う場所を見つけ、そこに引っ越してPC房としての登録をすること。もう1つは現在PC房として使っている場所を、法律に合うように業種転換をすることだ。

しかし場所の移転や業種転換といっても、精密機器の大量移動やシステム構築、改装などに費用がかかるので、コスト面で難しい人もいる。とくに業種転換は経営者の考え方や技術力の問題もあるので、そうやすやすとできるものではない。また韓国のPC房は1階よりも地下や2階にある場合が多い。商業条件的に不利なこれらの階において、PC房以外の業種で客をうまく取り込めるのかにも不安が残る。

さまざまな問題が解決しないまま、11月17日の施行に近づいている現状だ。そのためPC房が大量廃業という状況を防げるような対策が求められている。