ネットワーク機器メーカーの米3Comは9月28日(現地時間)、独立系投資会社の米Bain Capital Partnersへの売却で合意したと発表した。買収総額は22億ドルで、全額キャッシュで行われる。3Com株1つあたり5.30ドルが割り当てられるが、これは同社の9月27日終了時点の株価3.68ドルに44%のプレミアを乗せたものになる。3Comは2003年にジョイントベンチャーを設立した中国企業のHuaweiとのパートナーシップを堅持していくと述べており、業界他社へのBainからの売却の可能性が現時点で低いことを示唆している。

3Comはイーサネット技術の父として知られるRobert Metcalfe氏らによって1979年に設立された、草創期のシリコンバレーを代表する企業の1つ。初のイーサネット製品を市場に送り出し、企業LANによるクライアント/サーバシステムの礎を築いた。だが1990年代半ばに入るとライバル企業が多数出現して競争が激化し、しだいに苦戦が目立つようになった。特に1990年代後半に入るとハイエンドのルータやスイッチ製品で米Cisco Systemsが台頭するようになり、軸足をミッドレンジ以下の製品に移すようになる。またダイヤルアップモデムやPalm Pilotの製造を行っていた米U.S. Roboticsを買収してコンシューマ市場の開拓を試みるものの、トレンドの移り変わりとともに売上は減少し、2000年に同事業を手放した。2003年には通信事業者向けのCommWorks部門を切り離し、事実上キャリア向けビジネスから撤退。同年には長年居を構えたシリコンバレーの地を離れ、東海岸の米マサチューセッツ州マールボロに本社を移した。

ネットワーク機器メーカーの草分け的存在として活躍してきた3Comだが、前述のように近年では北米での苦戦が目立つ。そこで目をつけたのが中国などのアジア地域での新市場開拓だ。2003年には中国のHuaweiとの提携でジョイントベンチャーのHuawei-3Comを設立、アジア地域への足掛かりを作った。その後、2007年11月をめどにHuaweiが持つジョイントベンチャーの株式49%の買い取りを発表し、運営の強化を図っている。だが3Comが28日に発表した2008年第1四半期(6-8月期)決算では1870万ドルの赤字と前年比で純損失がさらに拡大しており、依然として苦戦の状態にあることがわかる。

米紙などの報道によれば、以前より3Comの買収にはライバルの加Nortel Networksなどが興味を持っていたという。だがBainへの売却が決まり、Huaweiとの提携関係維持が表明されたことで、これらライバルによる3Com買収の可能性は低くなったといえる。一方のHuaweiは3Comとの関係を重視しており、最終的にHuawei自身が3Comの買収や合併に向けて動く可能性がある。